「客寄せパンダ」は本当だった!~白浜のパンダ返還で見えた観光業の現実~

2635文字 Blog, シリーズ『学び』

「客寄せパンダ」という表現、よく耳にしますよね。人気者や注目の的となって、たくさんの人を集める存在を指して使われる言葉です。でも、実際のパンダが本当に「客寄せ」の効果があるのかどうかは、正直半信半疑でした。ところが最近、その疑問が一気に解決される出来事がありました。和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドから中国にパンダ4頭が返還されて約2か月。その後の白浜の状況を見ると、まさに「客寄せパンダは本当だった」ということが如実に表れているんです。

生成AIでなかなか上手にできましたが、柵の中に人がいるあたり、まだまだ発展の余地はありそうですね

パンダがいなくなった白浜で何が起きているのか

今年6月、アドベンチャーワールドのジャイアントパンダ4頭全てが中国に返還されました。そして2か月が経った今、白浜町では大きな変化が起きています。

最も分かりやすいデータが、ホテル宿泊者数の減少です。なんと1万人減という数字が報告されています。これは単なる「ちょっと減った」というレベルではありません。観光地にとって、これだけの宿泊者数減少は経営に直結する深刻な問題です。

地元の旅館女将からは「ことしはまだまだお部屋が空いている状況。9月10月まで影響してしまうとなると、かなり厳しくなる」という悲痛な声が上がっています。お盆という観光業界にとって最も重要な時期でさえ、客室が埋まらないという状況なのです。

町長の危機感と「負の循環」への警告

白浜町の大江康弘町長のコメントが印象的でした。「パンダがいなくなってお客が少なくなった。それが”パンダのせい”だという、そういう循環をやっぱり断ち切らないと」

このコメントからは、町長の強い危機感が伝わってきます。パンダがいなくなったことで観光客が減り、「白浜=パンダがいない=魅力がない」という負のイメージが定着してしまうことへの懸念です。一度こうした印象が広がってしまうと、パンダ以外の魅力があってもなかなか客足は戻らない可能性があります。

アドベンチャーワールドの対応策

アドベンチャーワールド側も手をこまねいているわけではありません。パンダがいなくなった今、新たな取り組みを始めています。

最も注目されているのが、「パンダがいた場所に特別に入ることができるイベント」です。以前はパンダたちがくつろいでいた運動場に観光客が入って、写真を撮ったり思い出に浸ったりできるというものです。

参加者からは「パンダ返還は割とショックが大きくて…でもここに来たら、あの子たちがいた場所なので、思い出に浸れる。癒されている」という声が聞かれます。これは、パンダそのものはいなくても、パンダとの思い出や体験に価値を見出すファンがいることを示しています。

ファンの複雑な心境

一方で、パンダファンの中には複雑な心境を抱える人もいます。千葉県から2か月に1回のペースで白浜に通い続けてきたパンダファンの方は、「次にパンダがまた来たら行くつもりで、1回終わりにした。(白浜に)行っても、パンダいないと思うと、寂しさをますます上書きしちゃう」とコメントされています。

この「パンダが戻って来るまで、白浜には行かない」という声は、パンダの集客力の大きさを如実に物語っています。これらのファンにとって、白浜=パンダという図式が完全に成立していたことが分かります。

データが語る「客寄せパンダ」の現実

アドベンチャーワールドは具体的な数字を明かしていませんが、「7月やお盆の人出は減っている」と認めています。お盆という観光業界の書き入れ時でも人出が減るというのは、相当な影響です。

空撮映像でも、駐車場の空きが目立つなど、視覚的にも人出の減少が確認できるほどの変化が起きています。これまで「客寄せパンダ」という表現がどの程度現実を表しているか疑問でしたが、今回の事例は完全にその効果を証明しています。

観光業における「看板コンテンツ」の重要性

今回の白浜の事例は、観光業における「看板コンテンツ」の重要性を改めて浮き彫りにしました。パンダは間違いなく白浜の最大の看板コンテンツだったのです。

白浜には、美しい海岸線、温泉、グルメなど、パンダ以外にも多くの魅力があります。でも、観光客にとっての「白浜に行く理由」の最上位にパンダがあったことは否定できません。これは、ブランディングや集客において、「シンボルとなる強力なコンテンツ」がいかに重要かを示しています。

ビジネスの世界でも通じる教訓

この「客寄せパンダ」現象は、観光業以外のビジネスにも通じる教訓があります。

スター商品・サービスの影響力 企業にとっての「パンダ」に相当するスター商品やサービスがなくなった時の影響は計り知れません。売上の大部分を支えている主力商品の重要性を再認識させられます。

顧客ロイヤルティの本質 パンダファンの行動は、真の顧客ロイヤルティとは何かを教えてくれます。単なる満足ではなく、深い愛情や継続的な関係性が、ビジネスの基盤となることを示しています。

ブランドの核となる価値 白浜にとってパンダが果たしていた役割は、企業にとってのブランドの核となる価値と同じです。それを失った時のブランド力の低下は、想像以上に大きいものです。

白浜の今後への期待

町長の「負の循環を断ち切らないと」という言葉には、強い意志を感じます。パンダに頼らない白浜の魅力を改めて発信し、新たな集客策を展開していくのでしょう。

実際、白浜には美しい海岸、良質な温泉、新鮮な海の幸など、パンダ以外にも素晴らしい観光資源がたくさんあります。これらの魅力を改めてアピールし、パンダなき白浜の新たな魅力を確立できるかが今後の鍵となりそうです。

まとめ

今回の白浜の事例は、「客寄せパンダ」という表現が決して比喩ではなく、文字通りの現実だったことを証明しました。パンダの集客力は想像以上に強力で、それを失った影響も想像以上に大きかったのです。

これは観光業だけでなく、あらゆるビジネスにとって重要な示唆を与えています。看板コンテンツの重要性、顧客ロイヤルティの深さ、そして一つのコンテンツに依存することのリスク。どれも、私たちのビジネスにおいても学ぶべき点がたくさんあります。

白浜が今後どのように立ち直っていくのか、そしてパンダなき白浜の新たな魅力をどう打ち出していくのか。その取り組みからも、きっと多くのことを学べるはずです (^^)

前の記事 次の記事
この記事を書いた人
T.kawano

T.kawano

宮崎生まれ、宮崎&長崎育ち。長崎西高、長崎大学経済学部卒。
在学中からWeb業に従事して約20年。人生の半分以上をWebに注いできました。

デザインからライティング、撮影、プログラミングまでやっており、専門家としてセミナーをしたり、Webでお困りの方の相談にも乗ってきました。

「話す・作るWebディレクター」として活動中。
器用貧乏を逆手に取り、ITの力を活用して少数精鋭の組織で動いています。

三児と一猫の父。趣味は「お笑い」「アニメ(狭く深く)」「バドミントンとそれに必要なトレーニング」
「優しく」「仕事ができ」「面白い」人間を目指して日々精進中。