パルムが年間200億円を稼ぐアイスになれたワケ

3548文字 Blog, シリーズ『学び』

パルム公式サイトより

何を隠そう私は大好きなんです、あの濃厚なアイス「PARM(パルム)」。
公式サイトの↑の写真も雰囲気があっていいですよね♪

そんな大好きなパルムのことを調べてみました。

年間200億円!驚愕の売上数字

調べてみて最初に驚いたのが、その売上規模です。なんと2024年度のパルムの年間売上は200億円に達したというのです。年間出荷本数は約3億7000万本。これ、1日平均で約100万本以上売れている計算になります。

さらに驚くのは、2005年の発売開始時と比べて出荷金額が10倍以上に成長していること。約20年でここまで成長するなんて、本当にすごいですよね。コンビニに行けば必ずと言っていいほど見かけます。

パルムは「いいとこ取りアイス」だった

「なぜパルムはこんなに愛されるんだろう?」と思って調べていくうちに、開発背景がとても興味深いことが分かりました。

実は、パルムは森永乳業の既存商品である「ピノ」と「MOW」の良いところを組み合わせて生まれた商品だったんです。具体的には

  • ピノから:チョコとアイスの一体感ある口溶け
  • MOWから:コクとキレ、組織の滑らかさ

この「いいとこ取り」が、パルム独特の食感と味わいを生み出していたというわけです。確かに、パルムを食べている時の「チョコとアイスが一緒に溶けていく感じ」って、他のアイスにはない特別な体験ですよね。

開発チームは、従来のバーアイスにありがちな「チョコがはがれ落ちる」「口の中でアイスだけが先に溶ける」といった問題を解決することを重視したそうです。そのために、チョコは人肌の温度で溶けるように設計し、バニラアイスの成分もチョコとの相性を考えて調整したとのこと。

なるほど、だからパルムは「食べ心地」が他とは全然違うんですね。

実は発売当初は苦戦していた

意外だったのは、現在の大ヒット商品であるパルムも、発売当初は決して順調ではなかったということです。

発売後1〜2か月は売り上げが伸び悩み、製造ラインが止まる日もあったというから驚きです。今でこそ「パルムのライン」で埋められているという製造ラインも、当初はたった1つしかなかったそうです。

店頭での試食販売やテレビCMを通じて、少しずつ認知を広げていったという地道な努力があったからこそ、今の成功があるんですね。これって、私たちのビジネスでも学べることがたくさんありそうです。

どんなに良い商品でも、最初からヒットするとは限らない。大切なのは、諦めずに少しずつでも顧客に価値を伝え続けることなのかもしれません。

「大人のごほうびアイス」という絶妙なポジション

パルム開発のきっかけも面白いポイントでした。2005年当時、アイスといえば「子どものおやつ」という印象が強かったそうです。でも、少子高齢化が進む中で、子どもだけをターゲットにするのは限界があると考えた森永乳業が目をつけたのが、「大人が自分へのごほうびとして楽しめるアイス」という市場でした。

この「大人のごほうび」というコンセプト、本当に絶妙だと思いませんか?確かに、パルムって子どものおやつというより、ちょっと疲れた時に「自分へのご褒美」として食べることが多い気がします。価格も他のアイスと比べて少し高めですが、それが逆に「特別感」を演出している面もありそうです。

20年間ブレなかった「ブランドの世界観」

森永乳業の担当者が語った成功要因で特に印象的だったのが、「ブランドとしての世界観をぶらさなかったこと」でした。

20年間、一貫して「大人のための上質なバーアイス」というブランドイメージを維持し続けてきたそうです。これって、実はすごく難しいことだと思います。流行や競合の動向に合わせてコンセプトを変えたくなる誘惑もあったでしょうし、売上が伸び悩んだ時期には方向転換を考えることもあったかもしれません。

でも、ブレずに一つの方向性を貫き通したからこそ、消費者の中で確固たる「パルムらしさ」が確立されたんでしょうね。

最近は季節限定で新しい層を開拓

最近のパルムの戦略は2022年以降、季節限定フレーバーの展開に力を入れているそうです。

通常の購入層は30代以上の女性が中心ですが、季節限定フレーバーは若年層や男性にも好評だとか。確かに見たことのない味を見かけたことがあります。季節限定フレーバーは女性の方により喜んでもらいそうな印象ですが、男性もなんて意外でした。

しかも、単純に流行の味を取り入れるのではなく、「ひとひねり加えた、こだわりを感じられる味」を追求しているようです。ブランドの世界観を維持しながら、新しいお客様にもアプローチするという、とてもバランスの取れた戦略だと感じます。

猛暑で「濃厚系アイス」が人気?意外な消費傾向

暑い日には「ガリガリ君」のようなさっぱり系が売れそうに思えますが、実際にはパルムのような濃厚系アイスの需要も伸びているそうです。

その理由は、猛暑が続くと冷房の効いた室内で長時間過ごすことが多くなり、「濃厚な味わいのものを選ぶ傾向が出てきた」とのこと。さらに、夏の暑さでチョコレート菓子への需要が、冷たいチョコ系アイスであるパルムに流れているのではないかという分析もありました。

これって、消費者心理をとても良く表していると思います。確かに、クーラーの効いた部屋でゆっくりしている時は、さっぱり系よりも濃厚でリッチな味を楽しみたくなりますよね。

ビジネスの視点で見るパルムの成功要因

パルムについて調べれば調べるほど、ビジネス的な学びがたくさんあることに気づきました。

1. 明確なターゲット設定 「大人のごほうび」という明確なポジショニングで、他社との差別化を図った

2. 既存リソースの活用 ピノとMOWという自社の成功商品の良い部分を組み合わせることで、開発リスクを抑制

3. 一貫したブランド戦略 20年間、ブランドイメージを維持し続けることで、確固たるポジションを確立

4. 継続的な改善 発売当初の苦戦を乗り越え、地道な改善と認知拡大を継続

5. 時代に合わせた展開 コアブランドを維持しながら、季節限定フレーバーで新しい顧客層を開拓

どれも、私たちのような中小企業でも応用できる考え方ばかりです。

パルムから学ぶ「愛され続ける商品」の作り方

今回パルムについて調べてみて、「愛され続ける商品」には共通する要素があることに気づきました。

品質への妥協のなさ チョコとアイスの一体感、口溶けの良さなど、食体験にとことんこだわった開発姿勢

お客様目線での改善 「チョコがはがれ落ちる」といった従来商品の不満点を解消

適切な価格設定 「大人のごほうび」というコンセプトに見合った、少し高めの価格設定

継続的なコミュニケーション 発売当初の苦戦時期も諦めず、試食販売やCMで地道に認知拡大

これらの要素は、アイスという商品に限らず、どんなビジネスにも通じる普遍的な原則のような気がします。

「パルムを食べたくて売り場に来る」ブランドを目指して

記事の最後で、森永乳業の担当者がこんなことを語っていました。「アイスを買いにきてたまたまPARMを選ぶのではなく、PARMを食べたくて売り場に来てもらえるようなブランドを目指したい」

この言葉、すごく印象的です。「ついでに選ばれる商品」ではなく、「それを目的に来てもらえる商品」になること。これって、どんなビジネスでも究極の目標ですよね。

私自身も、確かに「今日はパルムが食べたい」と思ってコンビニに行くことがあります。きっと、多くの人がそうなんでしょう。書いている今もまさに食べたくなりました!

まとめ

何気なく食べていたパルムに、こんなにも深いストーリーと戦略があったなんて、正直驚きでした。年間200億円という数字の裏には、明確なビジネス戦略と、お客様への真摯な姿勢があったんですね。

発売当初の苦戦から現在の成功まで、決して順風満帆ではなかった道のりも、とても勉強になりました。良い商品を作っただけでは成功しない、継続的な努力と改善があってこその結果なんだということを改めて感じます。

次にパルムを食べる時は、きっといつもと違った味わい方ができそうです。あの濃厚な口溶けの裏には、こんなにもたくさんの工夫と想いが込められていたんですから。

皆さんも、普段何気なく使っている商品やサービスについて調べてみると、意外な発見があるかもしれませんよ。きっと、ビジネスのヒントもたくさん見つかるはずです (^^)

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この記事を書いた人
T.kawano

T.kawano

宮崎生まれ、宮崎&長崎育ち。長崎西高、長崎大学経済学部卒。
在学中からWeb業に従事して約20年。人生の半分以上をWebに注いできました。

デザインからライティング、撮影、プログラミングまでやっており、専門家としてセミナーをしたり、Webでお困りの方の相談にも乗ってきました。

「話す・作るWebディレクター」として活動中。
器用貧乏を逆手に取り、ITの力を活用して少数精鋭の組織で動いています。

三児と一猫の父。趣味は「お笑い」「アニメ(狭く深く)」「バドミントンとそれに必要なトレーニング」
「優しく」「仕事ができ」「面白い」人間を目指して日々精進中。