お盆の渋滞情報サイトの裏側~リアルタイム情報はどう作られる?~

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AIにいい感じに描いてもらいましたが、よく見ると親子らしき人が歩いていて大変危険です(笑)

お盆の帰省前に必ずチェックするのが、NEXCO各社やGoogle Mapsの渋滞情報ですよね。「関越道、現在25km渋滞中」「東名高速、通過時間2時間30分」といった情報を見て、出発時間を調整したり、ルートを変更したりした経験のある方も多いはず。でも、このリアルタイムの渋滞情報って、一体どうやって作られているのでしょうか?今回は、普段何気なく見ている渋滞情報の「裏側」を深掘りしてみたいと思います。

そもそも渋滞情報はどこから来るの?

まず最初に気になるのが、「誰がどうやって渋滞を測っているのか」ということです。実は、現在の渋滞情報は複数のデータソースを組み合わせて作られています。

ETCゲートのデータ活用 最も基本となるのが、ETCゲート間の通過時間データです。例えば、練馬ICから所沢ICまで、通常なら15分で通過できる区間が30分かかっていれば、その区間で渋滞が発生していることが分かります。

ETCの普及率が95%を超えている現在では、ほぼ全ての車両の移動データが収集できるため、非常に正確な渋滞状況を把握することができるんです。

路側設置の感知器 高速道路の路面や上空に設置されている車両感知器も重要なデータソースです。これらのセンサーは、通過する車両の速度や台数を常時計測しており、「時速20km以下が続いている」「車両密度が異常に高い」といった状況を検知できます。

プローブカー情報の活用 最近特に重要性が増しているのが、一般車両から収集される「プローブカー情報」です。カーナビやスマートフォンのGPS情報を匿名化して収集し、実際の走行速度や所要時間を把握しています。

これにより、高速道路だけでなく、一般道の渋滞状況まで詳細に把握できるようになりました。

リアルタイム処理の仕組み

収集されたデータは、どのようにしてリアルタイムの渋滞情報に変換されるのでしょうか?

データの統合と分析 各種センサーやETCゲートから送られてくる大量のデータは、交通管制センターのコンピューターシステムで統合・分析されます。このシステムは24時間365日稼働しており、数分おきに最新の交通状況を計算しています。

AIによる予測機能 単に現在の状況を把握するだけでなく、過去のデータや天気情報、イベント情報なども組み合わせて、今後の渋滞予測も行っています。最近では機械学習やAI技術を活用して、より精度の高い予測が可能になっているそうです。

多段階での情報配信 処理された情報は、VICS(道路交通情報通信システム)を通じてカーナビに配信されたり、Webサイトやスマートフォンアプリで公開されたりします。この一連の処理が、わずか数分で完了するというから驚きです。

Google Mapsはどうやって渋滞を知る?

Google Mapsの渋滞情報も、私たちの移動には欠かせませんよね。Googleの場合は、少し違ったアプローチで渋滞情報を収集しています。

匿名化されたスマートフォンデータ Googleは、位置情報をオンにしているAndroidスマートフォンや、Google Mapsを使用しているiPhoneユーザーの移動データを匿名化して収集しています。何百万台ものスマートフォンから得られるGPSデータを分析することで、非常に詳細な交通状況を把握できるのです。

リアルタイム性の高さ スマートフォンは常時移動しているため、従来の固定センサーよりもリアルタイム性が高いのが特徴です。新しい渋滞の発生や解消を、より早く検知できます。

世界共通のプラットフォーム また、Googleのシステムは世界共通のプラットフォームを使用しているため、日本の高速道路だけでなく、海外旅行先でも同様に正確な渋滞情報を提供できます。

渋滞情報サイトの技術的な工夫

渋滞情報を提供するWebサイトやアプリには、ユーザーが快適に情報を得られるよう、様々な技術的工夫が施されています。

色分けとビジュアル化 「緑=順調」「黄色=やや混雑」「赤=渋滞」「濃い赤=激しい渋滞」といった色分けは、一目で状況を把握できる優れたインターフェースです。

自動更新機能 リアルタイム情報を提供するため、ページの自動更新機能が実装されています。ユーザーが手動で更新しなくても、常に最新の情報が表示されるようになっています。

レスポンシブデザイン スマートフォンでも見やすいよう、画面サイズに応じて表示が最適化される「レスポンシブデザイン」が採用されています。

キャッシュとCDNの活用 大量のアクセスが集中するお盆やゴールデンウィークでも、サイトが重くならないよう、キャッシュ技術やCDN(コンテンツ配信ネットワーク)が活用されています。

精度向上のための取り組み

渋滞情報の精度を向上させるため、各事業者では継続的な改善が行われています。

複数データソースの組み合わせ ETCデータ、センサーデータ、プローブカーデータなど、異なる特性を持つデータソースを組み合わせることで、より正確な情報を提供しています。

異常値の除外処理 例えば、事故や故障で停止している車両のデータが渋滞情報に影響しないよう、統計的な手法で異常値を除外する処理が行われています。

継続的な検証と改善 実際の交通状況と予測情報を比較検証し、アルゴリズムの継続的な改善が行われています。

災害時や特別な状況での対応

お盆期間中は通常時と異なる交通パターンになるため、特別な対応が必要になります。

過去データの活用 過去数年分のお盆期間中のデータを分析し、特有の渋滞パターンを学習させています。

イベント情報との連携 花火大会やお祭りなど、地域のイベント情報と連携して、より精度の高い予測を行っています。

緊急時の情報配信 事故や災害が発生した場合は、通常の渋滞情報とは別に、緊急情報として優先的に配信される仕組みになっています。

私たちができる「情報の見方」

これだけ高度な技術で作られている渋滞情報ですが、私たち利用者側も上手に活用するコツがあります。

複数の情報源をチェック NEXCO、Google Maps、Yahoo!カーナビなど、複数の情報源を比較することで、より正確な状況判断ができます。

時間的な余裕を持つ リアルタイム情報とはいえ、刻一刻と状況は変化します。予測時間に30分程度の余裕を見ておくと安心です。

代替ルートの確認 メインルートが渋滞している場合の代替ルートも事前に確認しておくと、柔軟な対応ができます。

技術の進歩と今後の展望

渋滞情報技術は今後さらに進歩していく予定です。

5Gとリアルタイム性 5G通信の普及により、さらにリアルタイム性の高い情報提供が可能になります。

自動運転技術との連携 将来的には自動運転車と渋滞情報システムが連携し、より効率的な交通流制御が実現される可能性があります。

個人最適化された情報提供 AIの発達により、個人の運転傾向や好みに合わせた、よりパーソナライズされた渋滞情報やルート提案が可能になるかもしれません。

まとめ

普段何気なく見ている渋滞情報の裏側には、これほど多くの技術と仕組みがあったんですね。ETCゲートのデータから始まって、AIによる予測、リアルタイム配信まで、まさに現代のIT技術の結晶と言えるでしょう。

そして、この高度なシステムを支えているのは、24時間体制で監視・運用している多くの技術者の方々です。お盆の帰省で渋滞情報をチェックする際は、そんな裏側の努力にも思いを馳せてみると、いつもと違った感謝の気持ちが湧いてくるかもしれません。

今年のお盆も、これらの技術を上手に活用して、安全で快適な移動を楽しんでくださいね。そして、渋滞にハマってしまった時は、「今この瞬間も、システムが頑張って最新情報を作ってくれているんだな」と思い出していただければと思います (^^)

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この記事を書いた人
T.kawano

T.kawano

宮崎生まれ、宮崎&長崎育ち。長崎西高、長崎大学経済学部卒。
在学中からWeb業に従事して約20年。人生の半分以上をWebに注いできました。

デザインからライティング、撮影、プログラミングまでやっており、専門家としてセミナーをしたり、Webでお困りの方の相談にも乗ってきました。

「話す・作るWebディレクター」として活動中。
器用貧乏を逆手に取り、ITの力を活用して少数精鋭の組織で動いています。

三児と一猫の父。趣味は「お笑い」「アニメ(狭く深く)」「バドミントンとそれに必要なトレーニング」
「優しく」「仕事ができ」「面白い」人間を目指して日々精進中。