時価総額5兆ドル突破のエヌビディア。時代に合わせてどんな変化をしてきたのか

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2025年10月29日、アメリカの半導体企業エヌビディア(NVIDIA)の時価総額が、世界で初めて5兆ドル(約760兆円)を突破しました。

5兆ドルって、どれくらいすごいのか。日本で最も大きいトヨタ自動車の約15倍です。わずか4ヶ月前に4兆ドルを超えたばかりなのに、あっという間に5兆ドルに到達しました。

このニュースを見て、「エヌビディアって、昔はグラフィックボードの会社じゃなかったっけ?」と思った方もいるかもしれません。

その通りです。でも、今のエヌビディアは全く違う会社になっています。

昔はグラフィックボードの会社だった

エヌビディアは1993年に創業しました。当初の主力製品は、PCゲームの画像処理を担当する「GPU(Graphics Processing Unit)」、いわゆるグラフィックボードです。

1999年にGPUを発明し、ゲーマーたちの間で人気を集めました。「高性能なゲーミングPCを作るなら、エヌビディアのグラフィックボード」というイメージが定着していました。

でも、エヌビディアのCEOジェンスン・フアン氏は、そこで満足しませんでした。

15年前の大きな決断。スマホを捨て、AIに賭ける

ここからが、エヌビディアのすごいところです。

2006年、エヌビディアは「CUDA」というプログラミングモデルを導入しました。これにより、GPUの並列処理機能を、グラフィックス以外の幅広い分野で使えるようになったんです。

そして2010年前後、世界中でスマートフォンが爆発的に普及し始めました。多くの半導体メーカーがスマホ市場に参入し、巨大な利益を得ようとしていました。

でも、ジェンスン・フアンCEOは、あえてスマホ市場を捨てる決断をしました。

代わりに、AI(人工知能)の開発に経営資源を一気に集中させたんです。当時、AIはまだ一般的ではありませんでした。でも、フアンCEOは「AIは必ず未来に必要になる。その時、エヌビディアが市場を独占できるように、今から準備する」と考えたんです。

この決断は、恐ろしいほどの先見の明でした。

2012年の転機。GPUがAIに最適だと判明

2012年、カナダのトロント大学の研究者が、GPUを使って高性能なAIを開発しました。

これがきっかけで、「GPUはAI開発に最適だ」ということが世界中の開発者に広まりました。

フアンCEOはこれを大きなチャンスと見て、GPUをグラフィックス向けではなく、AI向けに作り替えました。スマホとAIの両方を並行して開発するのは無理だと判断し、AI一本に絞ったんです。

結果、エヌビディアは「AIを開発するなら、エヌビディアのGPU」という絶対的な地位を確立しました。

現在のエヌビディア。AI時代の覇者

2022年11月、OpenAIが「ChatGPT」を発表しました。これをきっかけに、世界中でAIブームが起こります。

マイクロソフト、グーグル、メタ(旧Facebook)、アマゾンなど、巨大IT企業が競ってAI開発に巨額の投資を始めました。そして、彼らが必要としたのが、エヌビディアのGPUでした。

現在、エヌビディアはAI向けGPU市場で約7割のシェアを握っています。

しかも、ハードウェア(GPU)だけではありません。「CUDA」というソフトウェア基盤で、開発者を囲い込むエコシステムを構築しています。一度CUDAを使って開発を始めると、他社の製品に乗り換えるのが非常に難しいんです。

AI以外にも広がるエヌビディアの世界

さらにいい意味で恐ろしいのが、エヌビディアがAI以外の分野にも進出していることです。

自動運転: 「NVIDIA DRIVE」というプラットフォームで、自動運転車の頭脳を提供しています。

ロボティクス: 「Jetson」というプラットフォームで、ロボットの制御システムを提供しています。

産業デジタル化: 「Omniverse」というプラットフォームで、工場やビルのデジタルツイン(仮想空間での再現)を実現しています。

これらすべてが、エヌビディアのGPUとCUDAをベースにしたエコシステムで構築されています。つまり、AIだけでなく、自動運転、ロボット、産業のデジタル化など、未来の主要な技術分野で、エヌビディアがほぼ独占状態を作り上げているんです。

先見の明と戦略の勝利

エヌビディアの成功は、技術力だけではありません。

最も大きかったのは、ジェンスン・フアンCEOの「先見の明」と「戦略的な決断」です。

スマホが爆発的に普及する前に、あえてスマホ市場を捨てる。目先の利益ではなく、15年後の未来を見据えてAIに全力投資する。GPUというハードウェアだけでなく、CUDAというソフトウェアでエコシステムを作り、競合が追いつけない環境を構築する。

これらすべてが、計画的に、戦略的に行われてきました。

「産業革命に匹敵する変革が進行中」と言われるAI時代。その中心にいるのが、エヌビディアです。

時代に合わせた戦略で伸びてきたすごさ

グラフィックボードの会社から、AI時代の覇者へ。

エヌビディアの進化は、「時代に合わせた戦略」の重要性を教えてくれます。

目先の利益に飛びつくのではなく、未来を見据えて今から準備する。自社の強みを活かせる分野に集中し、エコシステムを構築して競合を寄せ付けない。

これは、私たちのような小さな会社にも通じる教訓だと思います。時代の変化を読み、先を見据えて行動する。それが、長期的な成功につながるんですね。

エヌビディアの時価総額5兆ドル突破は、ただの数字ではありません。戦略と先見の明が生み出した、歴史的な成果なんだと思います(^^)

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この記事を書いた人
T.kawano

T.kawano

宮崎生まれ、宮崎&長崎育ち。長崎西高、長崎大学経済学部卒。
在学中からWeb業に従事して約20年。人生の半分以上をWebに注いできました。

デザインからライティング、撮影、プログラミングまでやっており、専門家としてセミナーをしたり、Webでお困りの方の相談にも乗ってきました。

「話す・作るWebディレクター」として活動中。
器用貧乏を逆手に取り、ITの力を活用して少数精鋭の組織で動いています。

三児と一猫の父。趣味は「お笑い」「アニメ(狭く深く)」「バドミントンとそれに必要なトレーニング」
「優しく」「仕事ができ」「面白い」人間を目指して日々精進中。