第6章:ホームページを作る際に考えるべきポイント (3)ユーザー目線で使いやすさを追求する
これまで目的設定とデザイン・構成の重要性について解説してきました。しかし、どれだけ目的が明確で、見た目が美しいホームページでも、「使いにくい」ものでは本来の効果を発揮できません。
現代のホームページ制作において、ユーザー目線での使いやすさ(ユーザビリティ)の追求は必須条件となっています。特に競合他社が使いやすいホームページを提供している中で、使いにくいサイトは大きなハンディキャップとなってしまいます。今回は、本当に「使いやすい」ホームページを作るためのポイントを詳しく解説します。
作り手の都合よりも利用者の便利さを最優先に
内部事情に引きずられない構成
ホームページ制作でよくある失敗の一つが、会社の内部事情や組織構造をそのままホームページに反映してしまうことです。「営業部」「技術部」「管理部」といった社内の部署名をメニューにしたり、「事業A」「事業B」といった内部の分類をそのまま使ったりしてしまうケースです。
しかし、ホームページを訪れる人は、その会社の内部事情を知りません。彼らが知りたいのは「自分の課題を解決してくれるサービスはあるか」「信頼できる会社か」「どうやって問い合わせればよいか」といったことです。
社内の組織図ではなく、訪問者の視点に立って「何を求めているか」「どのような順序で情報を知りたがるか」を考えた構成にすることが重要です。
訪問者の「知りたいこと」を優先する
ホームページの構成を考える際は、「会社が伝えたいこと」よりも「訪問者が知りたいこと」を優先しましょう。例えば、会社概要や沿革よりも、サービス内容や料金、実績の方が多くの訪問者にとって重要な情報です。
また、情報の詳しさのレベルも訪問者に合わせる必要があります。専門的すぎる説明は一般の人には理解が困難ですし、逆に簡単すぎる説明では専門知識を持った人には物足りなく感じられます。想定する訪問者に応じて、適切なレベルの情報提供を心がけましょう。
スマートフォン対応は「あたりまえ」の時代
モバイルファーストの重要性
現在では、多くのホームページがスマートフォンからアクセスされています。業種によっては、アクセスの7割以上がスマートフォンからという場合も珍しくありません。そのため、「パソコンで見栄えが良い」だけでは不十分で、スマートフォンでの表示と操作性を最優先に考える「モバイルファースト」の考え方が重要になっています。
パソコン版を作ってからスマートフォン版に対応するのではなく、最初からスマートフォンでの利用を前提として設計し、その後パソコン版に展開するという順序で考えることが、より効果的なホームページ制作につながります。
スマートフォン特有の課題への対応
スマートフォンでホームページを見る際には、パソコンとは異なる課題があります。画面が小さいため一度に表示できる情報量が限られること、タッチ操作になるため細かいボタンが押しにくいこと、通信環境によっては読み込みが遅くなることなどです。
これらの課題を解決するには、重要な情報を上部に配置する、ボタンのサイズを十分に大きくする、画像のサイズを最適化するといった配慮が必要です。また、電話番号をタップするだけで発信できる機能など、スマートフォンならではの利便性を活用することも大切です。
タブレット対応も忘れずに
スマートフォンとパソコンの中間的な存在であるタブレットでの表示も考慮する必要があります。タブレットは画面サイズがスマートフォンより大きいものの、タッチ操作が基本という特徴があります。すべてのデバイスで快適に利用できるレスポンシブデザインの採用が重要です。
ページの読み込み速度と操作性
3秒ルールの現実
ウェブページの読み込み速度は、ユーザー体験に極めて大きな影響を与えます。特にスマートフォンユーザーは、ページが3秒以内に表示されないと他のサイトに移ってしまう傾向が強いと言われています。どれだけ素晴らしいコンテンツがあっても、それを見る前に離脱されてしまっては意味がありません。
読み込み速度の改善は技術的な側面が強いものの、制作段階での工夫で大幅に改善することが可能です。適切な画像サイズの選択、不要な機能の削除、シンプルなデザインの採用などが効果的です。
画像最適化の重要性
ホームページの読み込み速度を遅くする主な原因の一つが、最適化されていない画像です。高解像度の写真をそのまま掲載すると、ファイルサイズが大きくなり、読み込みに時間がかかってしまいます。
ウェブ用に適切なサイズと形式で画像を最適化することで、画質を保ちながら読み込み速度を大幅に改善することができます。また、画像の遅延読み込み(レイジーローディング)技術を活用することで、必要な部分から順番に読み込むことも可能です。
直感的なナビゲーション
訪問者が迷わずに目的の情報にたどり着けるよう、直感的で分かりやすいナビゲーションを設計することも重要です。どのページにいても現在位置が分かる、重要なページには複数の経路でアクセスできる、検索機能がある、といった配慮が使いやすさを大きく向上させます。
特に、問い合わせフォームや資料請求ページなど、ビジネスの成果に直結するページへの導線は、どのページからでも簡単にアクセスできるよう工夫しましょう。
アクセシビリティへの配慮
誰もが使えるホームページを目指す
アクセシビリティとは、年齢や障害の有無に関わらず、多くの人がホームページを利用できるようにすることです。高齢化社会が進む中で、この配慮はますます重要になっています。
文字サイズを調整できる機能、十分なコントラストの確保、音声読み上げソフトへの対応など、基本的な配慮を行うことで、より幅広い層のユーザーにリーチできるホームページになります。これらの配慮は、障害のない人にとっても使いやすさの向上につながります。
色だけに頼らない情報伝達
色覚に障害のある人でも情報を正確に理解できるよう、色だけに頼らない情報伝達を心がけることも重要です。重要な情報は色の違いだけでなく、形や文字でも区別できるようにする、十分なコントラストを確保するといった配慮が必要です。
継続的な改善のサイクル
データに基づく改善
ホームページの使いやすさは、実際に公開してから初めて分かることも多くあります。アクセス解析ツールを活用して、どのページで訪問者が離脱しているか、どのボタンがクリックされているか、どのデバイスからのアクセスが多いかなどのデータを収集し、継続的に改善していくことが重要です。
ユーザーの声を取り入れる
可能であれば、実際にホームページを利用したユーザーからの直接的なフィードバックを収集することも効果的です。問い合わせフォームに簡単なアンケート項目を追加したり、既存顧客にヒアリングを行ったりすることで、制作者では気づかない改善点を発見できることがあります。
使いやすさが競争力を決める時代
ホームページの使いやすさは、もはや「あれば良い」ものではなく、ビジネスの競争力を左右する重要な要素となっています。使いにくいホームページは、それだけで機会損失につながりかねません。
ユーザー目線での使いやすさを徹底的に追求することで、訪問者の満足度を高め、問い合わせや売上の増加につなげることができます。次章では、これらのポイントを踏まえた上で、実際にホームページを制作する際の費用や選択肢について詳しく解説していきます。