第7章:ホームページ制作にかかる費用と選択肢 (1)自作・テンプレート利用・制作会社に依頼、それぞれの違い

前章では、ホームページ制作で考えるべき重要なポイントについて解説しました。目的の明確化、効果的なデザイン・構成、ユーザー目線での使いやすさ──これらの要素の重要性を理解いただけたのではないでしょうか。

しかし、「重要性は分かったけれど、実際にはどの方法で作るのが自社に合っているの?」という疑問を持たれた方も多いはずです。ホームページ制作には、大きく分けて3つの方法があり、それぞれに大きく異なる特徴があります。今回は、この3つの選択肢について詳しく比較していきます。

自作(DIY):自社ですべてを手がける方法

自作のメリット:コストと自由度

自作の最大のメリットは、なんといっても費用の安さです。基本的には、ドメイン代とサーバー代だけでホームページを運営することができ、月額数千円程度の維持費のみで済みます。初期投資も最小限に抑えることができるため、予算が限られている小規模事業者にとっては魅力的な選択肢です。

また、すべてを自分でコントロールできるため、更新作業を思い立ったときにすぐに実行できる機動力も大きな魅力です。「明日からキャンペーンを始めたい」「新サービスの情報を今すぐ掲載したい」といった場合でも、外部に依頼する必要がなく、スピーディーな対応が可能です。

制作過程で自社のビジネスについて深く考える機会にもなります。「何を伝えたいか」「どんな会社として見られたいか」「お客様にどんな行動を取ってもらいたいか」などを整理する良いきっかけにもなるでしょう。

自作のデメリット:時間と技術的な限界

一方で、自作には大きなデメリットもあります。最も大きな問題は、技術的な知識がない場合、思うようなデザインや機能を実現することが困難なことです。「こんな風にしたい」というイメージがあっても、それを形にする技術がなければ実現できません。

また、制作に非常に多くの時間がかかります。初心者がゼロからホームページを作成する場合、数十時間から100時間以上の時間投資が必要になることもあります。この時間を本業に使った方が、結果的に利益につながることも多いのが現実です。

SEO対策、セキュリティ対策、レスポンシブデザインなど、現代のホームページに求められる技術的要素も、すべて自分で学習・実装する必要があります。これらの専門知識を身につけるだけでも相当な時間と労力が必要です。

自作に向いている企業・事業者

自作が適しているのは、以下のような場合です

  • 予算が非常に限られている
  • ITに詳しい人材が社内にいる
  • ホームページの重要度がそれほど高くない
  • まずは「ある」状態から始めたい
  • 時間に余裕がある

テンプレート利用:プロのデザインを活用する中間選択

テンプレート利用のメリット:品質とコストのバランス

テンプレート利用は、自作と制作会社依頼の中間的な選択肢として、多くの企業に選ばれています。最大のメリットは、プロがデザインしたテンプレートを活用することで、自作よりもはるかに洗練された見た目のホームページを作れることです。

多くのテンプレートサービスでは、業種別に最適化されたデザインが用意されています。飲食店向け、美容院向け、コンサルティング会社向けなど、それぞれの業界の特徴を理解したデザインを選ぶことができるため、「素人っぽさ」を感じさせない仕上がりが期待できます。

費用も制作会社に依頼するよりは大幅に安く抑えることができます。多くのサービスで月額数千円から1万円程度で運営でき、初期費用も比較的少額で済みます。更新作業も、多くの場合は直感的に操作できるような仕組みが用意されており、社内で対応することが可能です。

テンプレート利用のデメリット:制限と独自性の問題

テンプレートという性質上、デザインや機能に制限があることがデメリットです。「この部分だけ変更したい」「この機能を追加したい」といった要望があっても、テンプレートの仕様によっては実現できないことがあります。

また、人気のテンプレートを使用している場合、他社と似たようなデザインになってしまう可能性があります。特に同じ業界で同じテンプレートを使用している競合他社がいる場合、差別化が困難になることもあります。

ビジネスが成長し、より高度な機能や独自性の高いデザインが必要になった際に、テンプレートでは対応しきれなくなることもあります。その場合、結局は作り直しが必要になり、二重投資になってしまうリスクもあります。

テンプレート利用に向いている企業・事業者

テンプレート利用が適しているのは、以下のような場合です

  • 一定の品質を求めるが、予算は抑えたい
  • 早急にホームページが必要
  • 基本的な機能で十分
  • 更新作業は社内で行いたい
  • 将来的にはリニューアルも検討している

制作会社への依頼:プロフェッショナルな品質を追求

制作会社依頼のメリット:品質と専門性

制作会社への依頼の最大のメリットは、すべての面でプロフェッショナルなクオリティを期待できることです。デザインの美しさ、機能の充実、SEO対策、セキュリティ対策など、現代のホームページに求められるすべての要素を高いレベルで実現できます。

自社の業界や目的に特化したオリジナルデザインで、競合他社との明確な差別化が可能です。「他にはない」独自性の高いホームページを作ることで、企業のブランド価値向上にも大きく貢献します。

制作過程では、豊富な経験を持つ専門家のアドバイスを受けながら進められるため、「何が必要で何が不要か」「どうすれば効果的か」「どんなリスクがあるか」といった判断を適切に行うことができます。この専門的なコンサルティングも、大きな価値があります。

制作会社依頼のデメリット:費用と時間

最大のデメリットは、費用が高額になることです。規模や要求される機能によって大きく変動しますが、数十万円から数百万円の初期費用がかかることも珍しくありません。さらに、継続的な保守・運用費用も必要になります。

また、制作期間が長くなる傾向があります。企画から完成まで数ヶ月かかることもあり、急いでホームページが必要な場合には不向きです。完成後の更新作業も制作会社に依頼する必要があり、小さな変更でも費用と時間がかかることがあります。

制作会社依頼に向いている企業・事業者

制作会社への依頼が適しているのは、以下のような場合です

  • ホームページが事業に与える影響が大きい
  • 競合他社との差別化が重要
  • 十分な予算がある
  • 専門性や信頼性のアピールが重要
  • 長期的な投資として考えている

自社の状況に応じた選択が重要

3つの選択肢にはそれぞれ明確な特徴があり、「どれが正解」ということはありません。重要なのは、自社の予算、技術力、時間的制約、ホームページに求める役割などを総合的に考慮して、最適な選択肢を選ぶことです。

また、最初は予算を抑えた方法でスタートし、事業の成長に合わせて段階的にグレードアップしていくという戦略も有効です。次回は、それぞれの選択肢における具体的な費用の目安と、投資対効果の考え方について詳しく解説します。

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この記事を書いた人
T.kawano

T.kawano

宮崎生まれ、宮崎&長崎育ち。長崎西高、長大経済学部卒。
在学中からWeb業に従事して約20年。人生の半分以上をWebに注いできました。

デザインからライティング、撮影、プログラミングまでやっており、専門家としてセミナーをしたり、Webでお困りの方の相談にも乗ってきました。

「話す・動く・作るWebディレクター」として活動中。
器用貧乏を逆手に取り、ITの力を活用して少数精鋭の組織で動いています。

三児と一猫の父。趣味は「お笑い」「アニメ(狭く深く)」「バドミントンとそれに必要なトレーニング」
「優しく」「仕事ができ」「面白い」人間を目指して日々精進中。