できないと突っぱねるのではなく、やりたい想いをまずは伝える

打ち合わせの最中、クライアント様から少し申し訳なさそうに、こんな風に切り出されることがあります。

「すみません…好き勝手言いますが…本当はここを○○のようにしたいのですが、できますか?」

この「好き勝手言いますが」という枕詞。 これって、実は相手なりの精一杯の気遣いであり、ある種の「防衛線」なんですよね。

Webやシステムの専門知識がないからこそ、「こんなことを言ったら困らせるかな?」「素人の思いつきで、無茶苦茶なことを言っているんじゃないかな?」と、不安や迷いを抱えながら発してくれた言葉なんだと思います。 プロに対して意見を言うことへの萎縮や、否定されることへの怖さ。それでも、「本当はこうしたい」「もっと良くしたい」という想いあるからこそ出てきた言葉です。 一生懸命に想いを伝えてくれるその姿勢は、気遣いとして素晴らしいなと感じますし、何よりその気持ちを大事にしたい。

そんな風に言われると、私としても「それは仕様外ですね」「システム的に不可能です」と、教科書通りの回答でバッサリ切るなんてことはできません。 もちろん、即座に断る方が楽な場面もあります。でも、「なるほど……たしかに、○○ですもんね」と、まずは相手がなぜそうしたいと思ったのか、その「意図」や「背景」を深く汲み取ろうとします。

汲み取ってみると突飛に見えた要望が、実は理にかなった改善案であることに気づかされることも多いのです。

もちろん、技術的にどうしても難しい場合もありますし、逆に簡単に実装できる場合もあります。 工数が大きくかかる場合や、システムの根幹に関わるような変更の場合は、その場での判断が難しいことも事実です。 改めて見積もりを取り直すべきか、それとも納品後の運用フェーズで、時間に余裕がある時に少し手を入れてあげるか、あるいは別のプラグインで代用できないか……頭の中でいろんな選択肢が駆け巡ります。

でも、相手の「やりたい」という熱量を、まずは受け止めたいと思っています。

「私も、気持ちとしてはすごくやりたいです。ですので、ちょっと考えさせてください」

まずはそう伝えます。 即答で「No」を突きつけるのではなく、一度「Yes」の気持ちで受け止める。 まずは同じ方向を向くこと。これが何より大事だと思っています。

その上で、時間をいただいている間に色々と考えたり調べたりします。 極端な例ですが「そのまま実装すると100万円かかるけど、この工夫なら10万円で似たようなことができるかもしれない」 「今は無理だけど、公開後の更新フェースならスムーズに入れられるかもしれない」 そうやって、代替案はないか、工夫次第でどうにかならないか、出来うる限りの可能性を模索するようにしたいと思っています。もちろん全てでこのような時間を設けるのは難しいですができるだけやりたいと思っています。

ビジネスライクに割り切って、「それは仕様変更なので追加費用がかかります」「できません」と即答するほうが、もしかすると “仕事ができる営業マン” なのかもしれません。 感情を挟まず、契約内容のみに基づいて進行する方が回転率も上がるでしょうし、利益も確保しやすいでしょう。トラブルも少ないかもしれませんしね。

ですが、私は「ビジネスマン」である前に、一人の「人」としてクライアントと向き合い想いもあります。 相手の「良くしたい」という想いを無下にしたくない。 あなたに頼んで良かったと思ってもらいたい。

効率よりも相手の気持ちに寄り添い、一緒に悩み最善解を探す。 そんな泥臭いプロセスこそがWeb制作という仕事の醍醐味であり、信頼関係を築く上で何よりも大切なんじゃないかな、と改めて思います。

できない理由を探すのではなく、できる方法を一緒に探すパートナーでありたいですね(^^)

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この記事を書いた人
T.kawano

T.kawano

宮崎生まれ、宮崎&長崎育ち。長崎西高、長崎大学経済学部卒。
在学中からWeb業に従事して約20年。人生の半分以上をWebに注いできました。

デザインからライティング、撮影、プログラミングまでやっており、専門家としてセミナーをしたり、Webでお困りの方の相談にも乗ってきました。

「話す・作るWebディレクター」として活動中。
器用貧乏を逆手に取り、ITの力を活用して少数精鋭の組織で動いています。

三児と一猫の父。趣味は「お笑い」「アニメ(狭く深く)」「バドミントンとそれに必要なトレーニング」
「優しく」「仕事ができ」「面白い」人間を目指して日々精進中。