江戸走りが、SNSでバズりここまで人の心を掴む理由

先日、テレビで「SNSで江戸走りがバズっている」のを目にしました。独特なフォームで走るその姿は、最初は正直なところ「面白い」「ネタっぽい」という印象を持つ人も多いと思います。私自身も、最初はその一人でした。
ところが少し調べていくうちに、この江戸走りが単なる流行ではなく、長い挫折と研究の末に生まれたものだと知り、一気に興味が深まったのです。
ウェブに携わる者としては「なぜバズっているのか」、そして「その奥にある深さ」を探究したくなったので掘り下げてみたいと思います。
江戸走りバズは11年以上研究する方から生まれていた
この江戸走りを研究・発信しているのが、大場克則さん。名前だけ聞くと、昔から武術を極めてきた達人のように思えますが、その経歴は意外なものです。元々は製品開発の研究職を経て、建設機械レンタル会社で「受付のおじさん」をしていた方。しかも45歳まで、ほとんど運動経験がなかったといいます。ストレス解消のためにマラソンを始めた、ごく普通の市民ランナーでした。
100kmマラソンでの挫折が、すべての始まり
転機となったのは2013年。友人に誘われて参加した100kmマラソンで、65km地点で膝を痛め、無念の途中リタイアを経験します。
「悔しい。なんとか走れるようになりたい」
その思いから、大場さんは徹底的に調べ始めます。そして辿り着いたのが、ある歴史的な事実でした。
「江戸時代の人は、1日に100kmから160kmを走っていた」
しかし、そこに教科書や完成された理論はありません。大場さんは国会図書館に通い、浮世絵や古文書を調べ、断片的な情報を一つひとつ自分の体で再現していきました。そうして11年以上の研究の末、現代によみがえらせたのが「江戸走り」なのです。
頑張らない走り方。「筋力」ではなく「重力」で進む
江戸走りの最大の特徴は、「頑張らないこと」にあります。
現代のランニングは、地面を強く蹴り、筋力で前に進む走り方が主流です。一方、江戸走りは体を前に倒し、その重力を利用して進みます。
大場さんは「全身の力を緩めて、倒れる力で前に進む」と表現しています。力を抜くほど、疲れにくく、長く走れる。この考え方は、走ることに対する常識を大きく覆します。
足の裏にも、日本人の知恵があった
もうひとつ興味深いのが、着地の考え方です。
江戸走りでは、かかとではなく、足の指の付け根、いわゆる「肉球」にあたる部分で着地します。犬や猫、トラやゾウなど、四足歩行の動物がつま先で地面を捉えるのと同じ発想です。
ジャンプして着地する時、かかとから降りるより、つま先からの方が衝撃が少ない。あの感覚と同じで、膝への負担を大きく減らしながら、効率よく前に進めるのだそうです。
なるほど、足の指を肉球と捉えること自体が面白いですね。普段私は猫ちゃんが家にいて肉球も触りますが、その肉球部分が自分にもついているという発想はなかったです。
SNSでバズった理由は「技術」だけではない
江戸走りが一気に広まったきっかけは、ショート動画での発信でした。「1分間に288歩」という超ピッチ走法や独特な動き、クセになる音楽が注目を集め、去年の秋頃から爆発的に拡散されます。
特に面白いのが、コメント欄。もはや大喜利状態です。
瞬時に方向転換する技の動画には、「卒業式で使わせていただきます」「話しかけようとしたら知らない人だったと気づいた瞬間に使います」など、ユーモアあふれるコメントが並びます。
横走り(忍者走り)の動画では、「明日、新宿でこの走り方をしているサラリーマンがいたら俺です」といった投稿も。実際に、保育園の先生が子どもたちと一緒に遊びとして取り入れているという声もあるそうです。
誰でもマネができる、特別な準備がなくてもすぐできる。そしてクスっと笑える。短い動画でも伝わる。これらの要素が重なったのもバズった大きな要因なのでしょうね!
スポーツへの応用、そして「笑顔を生む技術」
一見ネタに見える江戸走りですが、実用性も注目されています。サッカーやバスケットボールなど、方向転換や接触の多いスポーツ、剣道や野球の走塁などへの応用も考えられており、海外の強豪サッカーチームが関連動画を投稿したという話もあります。
しかし大場さんが強調するのは、別の価値です。
「江戸走りを披露すると、必ず相手が笑ってくれる」
速く走るためだけではなく、膝を守るため、そして場の空気を和ませるため。江戸走りは、運動でありながら、コミュニケーションの潤滑油にもなっているのです。
流行の奥にある「人の物語」に惹かれる
江戸走りがここまで人の心を掴んだ理由は、その走り方以上に、挫折から始まり、地道な研究を続けてきた一人の人間の物語が見えるからなのだと思います。
新しいものや派手な理論ではなく、過去の知恵を掘り起こし自分の体で確かめ楽しみながら伝える。その姿勢こそが、多くの共感を呼んでいるのではないでしょうか
速く走るためでも、運動のためでもいい。あるいは、誰かを笑わせるためでもいい。温故知新の「江戸走り」し、面白いですね!
私が好きだったエピソードは、同窓会当日に朝5時から出発し、100km走って合流するという企画を自分で始め、途中経過を同級生にLINEで実況していた話。19:00ぐらいからの飲みなのに、21:30頃に合流していました。同級生の1人が「すごいとは思うけれど、お店のラストオーダーの時間ギリギリぐらいなので、大場君とあまり話せないのがちょっと残念です」…みたいなことを言っていたのが面白かったです!
見て面白い、聞いて面白い、やって面白い、なのに奥深い。これは本当に素晴らしいことだと思います!人が心が動くことを勉強できた気がします。江戸走りはしないと思いますが(^^)
大場さんのInstagram
https://www.instagram.com/katsunori_oba/
