人は「正しいから」ではなく「分かろうとしてくれた」と感じた時に心が動く

ウェブの講師としてセミナーをしたり、個別相談に乗ることもありますが、長年やっていてこんなことを言われたことがあります。

「他の先生は話をちゃんと聞いてくれず、アドバイスばかりしていたので嫌でしたが、河野先生はちゃんと話しを聞いてくれるので安心します」。

とても嬉しい言葉でした。ただ、ここで奢ってしまうと大切な部分を見落としてしまいます。相談者がどんな心情で話しているのか、どんな背景があるのか。それを理解しようとする姿勢こそが、相手の安心につながるのだと思い、改めて掘り下げてみたいと感じました。

仕事をしていると、「これは正しいはずなのに、なぜか伝わらない」という場面に出会うことがあります。こちらは良かれと思って話しているのに、相手の反応はどこかぎこちない。表情が曇ったり、会話が止まったり、なんとなく距離が生まれてしまうこともあります。正しさには自信があるのに、なぜか前に進まない。この“もどかしさ”は、多くの人が経験していると思います。

でも、それは相手が正しさを否定しているわけではありません。多くの場合、「自分の状況や考えを見てもらえていない」と感じているだけです。人は、正しい情報よりも先に「自分を理解しようとしてくれているか」を敏感に受け取ります。今日は、この“心が動く瞬間”について、少し掘り下げてみます。

正しいことを言っても動かないのは、相手が頑固だからではない

正論を伝えても反応が悪いと、「なんで分かってくれないんだろう」と思ってしまいがちです。でも、相手は正しさを拒否しているわけではありません。むしろ、多くの人は「正しいことは分かっている」。それでも動けないのは、別の理由があるからです。

例えば、業務改善の提案をした時に、相手が少し困った顔をすることがあります。内容は合理的で、効率も上がる。それでも反応が鈍いのは、こんな背景があるからです。

  • 「今のやり方にも理由があるのに、そこを見てもらえていない」
  • 「急に変えるのは不安があるけれど、その気持ちを汲んでもらえていない」
  • 「自分の苦労や事情を理解されていない気がする」

人は正しさを押し付けられると、どうしても身構えてしまいます。たとえ内容が正しくても、「自分の状況や気持ちが置き去りにされている」と感じると、心は閉じてしまうのです。

人が心を開くのは「分かろうとしてくれた」と感じた瞬間

人は相手が自分の立場や気持ちを理解しようとしてくれた時に、自然と耳を傾けるようになります。これは特別なテクニックではなく、ちょっとした姿勢の違いです。相手の気持ちに寄り添う一言があるだけで、会話の空気は驚くほど変わります。

例ではありますが、次のような一言があるだけで、相手の反応が変わる可能性は高いです。

  • 「今のやり方にも工夫がありますよね」
  • 「急に変えるのは不安もありますよね」
  • 「まずは現状を教えてもらえますか?」

これらは、相手の意見に合わせるための言葉ではありません。「あなたの状況を理解したい」という姿勢を示すための言葉です。その一言があるだけで、相手は「この人は自分を否定しようとしているわけではない」と感じ、心の扉が少し開きます。

そして不思議なことに、一度心が開くと、同じ説明でも受け取り方がまったく変わります。相手は「聞く準備」が整い、こちらの意図を素直に受け取れるようになるのです。

理解を示すことは、相手に迎合することではない

「理解を示す」と聞くと、相手に合わせすぎるイメージを持つ人もいます。でも、理解と迎合はまったく違います。理解とは、相手の背景や事情を一度受け止めること。迎合とは、相手の意見に無条件で従うこと。

ビジネスで必要なのは、もちろん前者です。相手の状況を理解した上で、必要な提案や改善を伝える。すると、同じ内容でも受け取られ方が大きく変わります。

例えば、業務改善の話をする時でも次のような流れにするだけで、相手の納得感はぐっと高まります。

  • まず現状の工夫や苦労を理解する
  • その上で、改善の必要性を説明する
  • 相手にとってのメリットを丁寧に伝える

順番を変えるだけで、相手の心の動きは大きく変わるのです。理解を示すことは相手を甘やかすことではなく、コミュニケーションの土台を整える行為なのだと思います。

少しの“理解の姿勢”が、行動を変えるきっかけになる

人は「正しいから動く」のではなく、「理解されていると感じたから動く」。これは、職場のコミュニケーションだけでなく、チームマネジメント、顧客対応、さらには家庭や友人関係にも共通する大切な原則です。

もし、相手が動いてくれないと感じる場面があったら、正しさを強めるのではなく、「相手の背景を理解しようとしているか」を一度振り返ってみると良いかもしれません。ほんの少しの姿勢の違いが、相手の心を動かすきっかけになります。

今日のコミュニケーションが、誰かにとって“理解されていると感じる瞬間”になりますように(^^)

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この記事を書いた人
T.kawano

T.kawano

宮崎生まれ、宮崎&長崎育ち。長崎西高、長崎大学経済学部卒。
在学中からWeb業に従事して約20年。人生の半分以上をWebに注いできました。

デザインからライティング、撮影、プログラミングまでやっており、専門家としてセミナーをしたり、Webでお困りの方の相談にも乗ってきました。

「話す・作るWebディレクター」として活動中。
器用貧乏を逆手に取り、ITの力を活用して少数精鋭の組織で動いています。

三児と一猫の父。趣味は「お笑い」「アニメ(狭く深く)」「バドミントンとそれに必要なトレーニング」
「優しく」「仕事ができ」「面白い」人間を目指して日々精進中。