ウェブマーケティングって何?なぜ注目されているのか|第2章(2)店舗ビジネス・サービス業の場合

前回(1)では、BtoB企業、製造業、専門職におけるウェブマーケティングの活用方法について解説しました。「一般消費者向けではない業種」でも十分な効果が得られることをご理解いただけたでしょうか。
今回(2)では、飲食店、美容室、小売店、サービス業など、地域密着型の店舗ビジネスにおける活用方法を詳しくご紹介します。「うちは地域のお客様がメインだから、ネットはあまり関係ない」と思われがちですが、実際には地域ビジネスこそウェブマーケティングが大きな効果を発揮する分野なのです。
(2) 店舗ビジネス・サービス業の場合
「地域密着型だからこそ」ウェブマーケティングが効く
「うちは昔からの常連さんが多いから大丈夫」「地域の人はみんな知っている」そう思われている店舗経営者の方は多いかもしれません。
しかし、考えてみてください。新しく引っ越してきた人、若い世代、これまでお店を知らなかった潜在顧客は、どうやってあなたのお店を見つけるのでしょうか。
現代のお客様の行動パターン
- 「○○市 美容室 おすすめ」とGoogle検索
- Googleマップで周辺の飲食店を探す
- InstagramやX(旧Twitter)で地域情報を収集
- 食べログやホットペッパーなどのレビューサイトをチェック
つまり、地域密着型ビジネスであっても、お客様との「最初の接点」はインターネット上にあることが多いのです。
美容室の事例:広告費依存からの脱却
経営者:Bさん(30代)| 店舗:地方都市の商店街 | スタッフ:3名
深刻化していた課題
スタッフ3名の小さな美容室を経営するBさんは、新規客獲得をホットペッパービューティーに完全依存していました。月々の広告費は15万円。新規客は来るものの、リピート率は30%程度。広告を止めると客足が途絶える悪循環でした。
月商は120万円。広告費15万円、スタッフ給与・家賃等で90万円。Bさんの手取りは月15万円程度という厳しい状況でした。
取り組んだウェブマーケティング施策
Bさんが着目したのは、「スタイリストの個性」と「施術のプロセス」を見せることでした。
1. Instagramでのビフォーアフター投稿
- 毎日1-2件、お客様の施術前後を投稿(許可を得て)
- お客様の髪質や悩み、提案した施術内容とその理由を記載
- 「くせ毛で広がりやすい→くせを活かしたカットで扱いやすく」など具体的に
- 自宅でのケア方法のアドバイスも添える
- 地域ハッシュタグ「#○○市美容室」「#くせ毛カット」などを活用
2. スタイリスト個人の発信
- 各スタイリストが得意分野を明確に
- 「ショートカット専門」「透明感カラーが得意」など
- 人柄が伝わる投稿で、お客様が「この人に切ってもらいたい」と思える状態に
3. お客様の髪質・悩み別の事例整理
- 「くせ毛」「白髪」「ダメージヘア」など悩み別にハイライトで整理
- 新規のお客様が自分と似た事例を簡単に見つけられる
- 「自分もこうなれるかも」という期待感を醸成
4. 予約導線の最適化
- Instagramプロフィールに予約ページへの直リンク
- LINE公式アカウントでの予約受付
- ストーリーズで「明日午後に空きあります」と随時更新
試行錯誤の期間
最初の3ヶ月は反応が薄く、「意味があるのか」と不安でした。しかし、少しずつフォロワーが増え、「Instagramを見て来ました」というお客様が現れ始めました。
1年後の成果
数値の変化
- 月商:120万円→145万円(約21%向上)
- Instagramフォロワー:100人→4,200人
- Instagram経由の新規予約:月35件以上
- ホットペッパー広告費:15万円→5万円(3分の1に削減)
- リピート率:30%→62%
- 指名予約率:40%→78%
経営への影響
- 月商25万円増加、広告費10万円削減で、年間420万円の改善効果
- Bさんの手取りは月15万円から35万円に倍増
- 広告に依存しない安定経営を実現
成功の要因
美容室選びでお客様が抱える不安(自分の髪質に合うか、希望の仕上がりになるか)を、Instagramでの詳細な情報発信で事前に解消。お客様は「この美容室なら安心」という状態で来店するため、満足度とリピート率が向上しました。
店舗ビジネス成功のポイント
この事例から学べる重要なポイントをまとめます。
1. お客様の不安を解消する情報提供
- 単なる宣伝ではなく、お客様が知りたいことを先回りして提供
- ビフォーアフターだけでなく、「なぜその施術を選んだか」まで説明
2. 継続性が何より重要
- 最初の数ヶ月は反応が薄くても諦めない
- 毎日少しずつでも投稿を続ける
- 完璧な投稿より、継続する投稿
3. 人柄を伝える
- スタイリスト個人の個性や得意分野を明確に
- お客様が「この人に任せたい」と思える関係構築
4. 予約しやすい導線
- SNSから予約まで3タップ以内で完結
- ストーリーズで空き状況を随時更新
今日から始められる3つのステップ
ステップ1:Googleマイビジネスの登録(所要時間:30分)
- 営業時間、住所、電話番号を正確に入力
- 店舗の魅力的な写真を5-10枚掲載
- サービス内容を詳しく記載
ステップ2:SNSアカウントの開設(所要時間:15分)
- InstagramまたはX(旧Twitter)のアカウント作成
- プロフィールに店舗情報と特徴を明記
- 予約への導線を設置
ステップ3:週3回の投稿習慣(1回5-10分)
- 商品・サービスの写真や動画
- お客様の声や利用事例
- 地域ハッシュタグを活用
最初の3ヶ月の目標は、週3回の投稿を継続すること。反応が少なくても、諦めずに続けることが成功への第一歩です。
次回予告
今回は、美容室の詳細な成功事例を通じて、地域密着型ビジネスにおけるウェブマーケティングの効果を解説しました。特別な予算をかけず、継続的な情報発信によって大きな成果を上げられることをご理解いただけたでしょうか。
次回(3)では、「お客様は既にウェブで情報収集している」という現実について、具体的なデータとともに詳しく解説します。業種を問わず、お客様の行動がどう変化しているのか、そしてそれに対応するために何が必要なのかをお話しします。
