廃棄寸前のチキンが、子どもたちの「ごちそう」に

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売れ残りチキンに、第二の人生?

「ケンタッキーフライドチキン(KFC)」のオリジナルチキン。お店で揚げたてを味わうあの定番メニューですが、実は閉店後に売れ残ったチキンが、子ども食堂などで活用されていることをご存じでしょうか?

以前はすべて廃棄されていたというこのチキン。2019年からKFCが始めた取り組みによって、冷凍保存のうえフードバンクを通して全国各地の子ども食堂に届けられるようになったのだそうです。しかもこの活動は、今では全国14都県・約500カ所にまで広がっているとのこと。すごい広がりですよね。

食品ロス対策と、地域の支え合い

KFCの執行役員の方によれば、この取り組みは「売れ残ったチキンをなんとかできないか」という現場の声からスタートしたそうです。

売れ残りチキンは店舗で当日中に冷凍・保管され、一定のルールに基づいて安全に配送されます。受け取った子ども食堂では、必ず加熱調理してから提供されることになっており、安心して食べられる体制がしっかり整えられています。

たとえば神奈川県のある子ども食堂では、このチキンをトマト煮にアレンジ。サラダやピラフなどとともに、あたたかい夕食として提供されていました。子どもたちにとっては、単なる「食事」ではなく、「地域のつながり」や「ほっとできる時間」にもなっているようです。

チキンは「そのまま」では使われない、安全・丁寧な調理が前提

KFCから冷凍で提供されたチキンは、ただ温めて提供されるわけではありません。各子ども食堂では、調理前に一つ一つ丁寧に骨と皮、衣と身を分ける作業が行われます。特に小さな子どもが食べることを考慮し、骨の誤飲などのリスクを避けるための配慮が徹底されています。

加えて、解凍後は必ず加熱調理を行い、調理済みメニューとして提供されます。KFC側は提供先の団体に対して、こうした作業手順を丁寧にレクチャーしており、「安心・安全の食」を支えるための仕組みが現場レベルで根付いているのです。

子どもたちの「居場所」を支えるチキン

子ども食堂というと「経済的に困っている子の場所」という印象を持たれがちですが、必ずしもそうとは限りません。

たとえば、神奈川県のある地域では「中学生が昔の友達に会うために来ている」など、子どもたちにとっての“居場所”として機能しているそうです。さらには、そこでの経験から「自分でも子ども食堂をやってみたい」と考える子も出てきているというのが、とても印象的でした。

一方、東京・新宿の歌舞伎町では、事情を抱えた子どもや若者が通う「みらいカフェ」という子ども食堂でもKFCのチキンが活用されています。家庭に帰れない、頼れる大人がいない、そんな子どもたちが少しでも安心できる場所としての役割を果たしています。

このカフェでは、骨付きチキンを親子丼にアレンジするなど、工夫しながら提供。味付けがしっかりしているKFCのチキンだからこそ、さまざまなアレンジができるのかもしれません。

廃棄寸前が「ごちそう」に変わるしくみ

チキンを提供するには、食品衛生上の配慮や手間も多く、決して簡単な取り組みではありません。それでもKFCでは、第三者機関による検査や自治体との連携、現場への丁寧なマニュアル提供など、細やかな安全対策を続けています。

こうした取り組みを可能にしているのは、飲食チェーンならではの食品管理の知識と経験。KFCのこの実践は、「食品ロス」と「地域支援」という2つの社会課題を同時に解決するモデルとして、他の企業にも大きなヒントを与えてくれます。

「おいしい」は、つながりをつくる

私たちが普段何気なく口にしているファストフードの裏側で、これほどの仕組みが動いているとは思いませんでした。

廃棄寸前のチキンが、手を加えられて、誰かのごちそうに。食べた子どもが笑顔になる。その笑顔にまた、大人が動かされていく。

ただの「食品ロス対策」では終わらない、あたたかい循環が、少しずつ広がっていることに気づかされる話でした(^^)

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この記事を書いた人
T.kawano

T.kawano

宮崎生まれ、宮崎&長崎育ち。長崎西高、長大経済学部卒。
在学中からWeb業に従事して約20年。人生の半分以上をWebに注いできました。

デザインからライティング、撮影、プログラミングまでやっており、専門家としてセミナーをしたり、Webでお困りの方の相談にも乗ってきました。

「話す・動く・作るWebディレクター」として活動中。
器用貧乏を逆手に取り、ITの力を活用して少数精鋭の組織で動いています。

三児と一猫の父。趣味は「お笑い」「アニメ(狭く深く)」「バドミントンとそれに必要なトレーニング」
「優しく」「仕事ができ」「面白い」人間を目指して日々精進中。