分かりやすさと格好良さはどちらを優先させる?ローソンのコーヒーカップのサイズが紛らわしい問題から学ぶこと

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突然ですが、ローソンでコーヒーを買ったことはありますか?

もし最近買ったことがある人なら、カップを見て「あれ、これMサイズ?Lサイズ?」と一瞬迷ったかもしれません。実は、ローソンのコーヒーカップのデザインが紛らわしいと話題になっていて、ついにデザイン変更が決まったんです。

今日は、この話から学べることを考えてみたいと思います。

何が問題だったのか

ローソンでは、いれたてコーヒーを店内で提供する「マチカフェ」があります。このコーヒーカップに、今年3月から順次、プライベートブランド「3つ星ローソン」のロゴとして「L」字マークを導入していました。

これが問題だったようです。

この「L」字マークが、サイズ表記の「L(ラージ)」と紛らわしいという声が出たんです。確かに、コーヒーカップのサイズって、S(スモール)、M(ミディアム)、L(ラージ)で表記されることが多いですよね。

そこで、9月から、カップ下部に順次「M SIZE」などのサイズ表記を追加しました。

でも、それでも問題は解決しませんでした。なぜなら、「L」字のロゴに比べて「M SIZE」などの表記が小さすぎて、やっぱり分かりにくかったからです。

お笑い芸人からのクレーム

この問題が大きな話題になったのは、お笑いコンビ「ナイツ」の塙宣之さんがラジオ番組でローソンに「クレーム」を入れたことがきっかけだったようです。

塙さんは47歳。きっと、老眼もあって小さい文字が見えにくかったのかもしれません。

しかし大きな「L」字が目立つのに、肝心のサイズ表記は下の方に小さく書いてある。これは歳や老眼のせいだけではなく、パッと見て分かりにくいというのが問題だったのでしょうね。

ローソンの対応

ローソンは11月18日、「今後カップのデザインを分かりやすいものに変更することにいたしました」と発表しました。

変更時期は、現在使用しているカップの在庫を使い切ることを考えて、約3か月後を予定しているそうです。それまでの間は、緊急の対応として、店内に順次お知らせを掲示しているとのこと。

お知らせでは、「マチカフェカップデザインについてのご案内」として、カップ下部のサイズ表記を赤枠で囲んで、「サイズ表記につきましては、カップ下部をご確認ください」と呼びかけています。

また、ローソンは「お客様への配慮が不足しておりました」として謝罪しています。

デザインで大切なこと

この問題から学べること…

その1つは、「作り手の視点」と「使い手の視点」は違うということです。

ローソンとしては、プライベートブランドのロゴを入れたかった。他の商品と同じように、カップにも「L」字マークを印字したかった。これはブランディングを図る作り手の視点です。

でも、使い手の視点で考えると、コーヒーカップに大きく「L」と書いてあったら、「これはLサイズだ」と思うのが自然です。特に、慌ただしい朝にコーヒーを買う時なんて、じっくりカップを見ている暇はありません。

デザインは「分かりやすさ」は大切な要素の1つです。もちろん状況や見せ方によっては、分かりやすさよりも格好良さや洗練さが優先されることもあります。

どんなにカッコイイデザインでも、ユーザーが混乱するようなデザインは良いデザインとは言えない場合もあるということですね。

作り手は慣れる、もしくは攻めてしまう

作り手は、自分が作ったものに慣れてしまうケースもあります。

ローソンの担当者も、何度もカップのデザインを見ているうちに、「L」字マークはロゴであって、サイズ表記は下にあるということが当たり前になっていたはずです。

また、分かりにくいことが分かっている上で「攻める」場合もあります。サイズも表記しているから分かるけれど、サイズの文字を大きくしたら野暮ったくなってしまう。なのでデザイン性を保ったままサイズを伝えるために字を小さくした。このようなパターンも考えられます。

実はセブンイレブンも分かりにくい

ちなみに、個人的にはセブンイレブンのコーヒーカップも分かりにくいと思っています。
セブンイレブンは「R」(レギュラー)と「L」(ラージ)という表記なんですが、これもパッと見で分かりにくいんですよね。
もちろん、「レギュラー」と「ラージ」と読めば問題はありません。でも、慌てている時や目が疲れている時に「R」と「L」だけを見ると、一瞬「あれ、どっちだっけ?」となることがあります。
アルファベット一文字だと、瞬時に判断しにくいですよね。

フィードバックを受け入れる姿勢

今回のローソンの対応で素晴らしいと思うのは、フィードバックを受け入れて、すぐに改善に動いたことです。

一度導入したデザインを変更するのは、コストもかかるし手間もかかります。でも、お客様から「分かりにくい」という声が出た以上、改善するのが正しい判断です。

「在庫を使い切ってから3か月後に変更」というのも、現実的な対応だと思います。すぐに全部を変えるのは難しいですが、それまでの間は店内にお知らせを掲示して対応する。これも良い判断です。

3か月後と言わずにすぐ換えないと…と思う方もいると思います。しかし今回は印字が間違っていたのではなく、より分かりやすくするためのことですので、私としては今回の対策で良いと思います。

私たちも気をつけよう

自分では当たり前だと思っていることが、他の人にとっては分かりにくいかもしれない。大きく表示しているつもりでも、もっと大きくした方が良いかもしれない。逆に分かりやすさばかり追及しすぎて、逆に分かりにくくなっていることもある。

デザインをしているとそんなこともたくさんあります。

試行錯誤し、意見を出し合い、そして改善していく。こうやってデザインはより良くなっていくのだと思います。

難しいけれど、面白い、それがデザインです(^^)

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この記事を書いた人
T.kawano

T.kawano

宮崎生まれ、宮崎&長崎育ち。長崎西高、長崎大学経済学部卒。
在学中からWeb業に従事して約20年。人生の半分以上をWebに注いできました。

デザインからライティング、撮影、プログラミングまでやっており、専門家としてセミナーをしたり、Webでお困りの方の相談にも乗ってきました。

「話す・作るWebディレクター」として活動中。
器用貧乏を逆手に取り、ITの力を活用して少数精鋭の組織で動いています。

三児と一猫の父。趣味は「お笑い」「アニメ(狭く深く)」「バドミントンとそれに必要なトレーニング」
「優しく」「仕事ができ」「面白い」人間を目指して日々精進中。