「ツールで簡単にホームページが作れる時代」なのに、素人が挫折してしまう理由

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これまで県や市の専門家派遣でウェブの専門家としても活動をしてきた私ですが、相談の中で多かったものの1つとして「ホームページを作りたいけど、分からない」ということでした。

ホームページを無料から作成できるツールはいくつかあり、簡単につくり始めることはできるんです。

ですが、色々な所で躓いてしまって進めなくなるというケースが多いんです。

「WIXやJimdo、STUDIOみたいなツールがあるのに、どうしてうまくいかないの?」という疑問を持つ方もいらっしゃいますが、実際に使ってみると見えてくる課題があるんですよね。

WIXなどのDIYツールの素晴らしさ

まず最初に言っておきたいのは、WIXやJimdo、STUDIOなどのホームページ制作サービスは本当に素晴らしいということです。

昔は専門知識がないとホームページなんて作れませんでしたが、今では本当に簡単に、それなりに見栄えの良いサイトが作れるようになりました。テンプレートのクオリティも高いし、ドラッグ&ドロップで操作できるのも直感的で分かりやすい。

実際、小規模な事業者さんや個人の方で、これらのツールを使って素敵なホームページを作られている例もたくさん見かけます。コストも月額数百円から始められるので、予算の面でも魅力的ですよね。

でも、実際に使ってみると難しいとの意見も…

その理由についてお話します。

デザインの自由度の高さが逆に迷いを生む

WIXの良さでもあるのですが、自由度が高すぎて「何をどこに配置すればいいのか分からない」という状況に陥りがちです。プロのデザイナーなら「ここにはこの情報を、こんなレイアウトで」と判断できますが、初心者にはその判断基準がありません。

テンプレートを選んだはいいものの、「このテンプレートに自分のお店の情報をどう当てはめればいいの?」「写真はどのサイズでどこに入れればいいの?」といった疑問が次々と湧いてきます。

「なんか微妙…」を解決できない

作業を進めていくうちに「なんとなく形にはなったけど、なんか微妙…」という状態になることがよくあります。でも、何が微妙なのか、どこを直せばいいのかが分からない。

色使いがちぐはぐ、文字の大きさがバラバラ、写真と文章のバランスが悪い…こういった「なんとなくおかしい」ポイントを見つけて修正するのは、実は結構な専門スキルが必要なんです。

「何を書けばいいのか分からない」という根本的な悩み

デザインの問題以上に多くの方が悩むのが、「そもそも何を書けばいいのか分からない」という問題です。

友人のカフェ店主も「会社概要とメニューは載せたけど、他に何を書けばいいの?」と困っていました。お客様が知りたい情報と、自分が伝えたい情報は必ずしも一致しません。

「お客様目線での文章」って、言葉で言うのは簡単ですが、実際に書くとなると難しいものです。専門用語をどの程度使うか、どのくらい詳しく説明するか、どんなトーンで書くか…この辺りの判断は経験が必要です。

写真選びのゴール

テンプレートを選んで、レイアウトもなんとなく決まったものの、今度は「どんな写真を使うか」で行き詰まります。

無料の素材サイトで写真を探しても、自分のお店や会社のイメージに合うものがなかなか見つからない。かといって、スマホで撮った写真をそのまま使うと、なんだか素人っぽい仕上がりに…。

文章も同じです。「当店は美味しいコーヒーを提供しています」では味気ないし、でも文学的すぎると読みにくい。「お客様に愛される店作りを心がけております」って書いてみたものの、これって本当に伝わるのかな?と不安になってきます。

スマホ対応で躓く

パソコンで作業していると、つい「パソコンで見た時の見栄え」ばかりに気を取られがちです。でも実際には、多くの人がスマートフォンでサイトを見るので、スマホでの表示が重要。

「パソコンでは良い感じなのに、スマホで見ると文字が小さすぎる」「画像が切れて見える」「ボタンが押しにくい」といった問題が発生します。WIXなどのツールもレスポンシブ対応(スマホ対応)はしてくれますが、細かな調整は自分でやる必要があります。

公開設定の迷路で迷子になる

やっとホームページが形になってきて、「さあ公開しよう!」と思ったら、今度は公開設定で迷子になります。
無料プランのまま公開すると「○○.wixsite.com/yoursite」みたいなURLになるけれど、これで大丈夫なの?独自ドメインって取った方がいいの?「○○.com」にするには有料プランにしないといけないけれど、どのプランを選べばいいの?
そして次々と出てくるオプションの提案。「Google Analytics設定しませんか?」「SEO設定は大丈夫ですか?」「SSL証明書は?」…専門用語のオンパレードで、何が必要で何が不要なのか判断できません。
「とりあえず公開できればいいと思ったのに、なんでこんなに選択肢があるの?」と困惑していました。結局、よく分からないまま有料プランに加入したものの、「これで良かったのかな?」という不安が残ったそうです。

時間コストという見落としがちな問題

意外と見落とされがちなのが、時間コストの問題です。

「自分で作れば安く済む」と思って始めたものの、操作方法を覚えるのに時間がかかり、デザインを決めるのに悩み、文章を考えるのに苦労し…公開設定で時間がかかる…気がつくと何十時間も費やしているケースがよくあります。

その時間を本業に使った方が、結果的に収益につながったかもしれません。特に個人事業主や小規模事業者の方にとって、時間は何より貴重なリソースですからね。

SEOやマーケティングの視点が抜けがち

ホームページを作ることがゴールになってしまい、「作った後にどうやって人に見てもらうか」という視点が抜けがちなのも課題の一つです。

検索エンジンで見つけてもらうためのSEO対策、SNSとの連携、アクセス解析の設定など、ホームページを「作る」だけでなく「活用する」ための知識も必要になります。

これらは技術的な知識だけでなく、マーケティングの知識も必要な分野なので、初心者にはハードルが高いかもしれません。

プロに依頼する価値とは

では、プロのWeb制作会社に依頼する価値はどこにあるのでしょうか?

デザインの一貫性とユーザビリティ

プロは「なぜこの色を使うのか」「なぜこのレイアウトにするのか」という理由を説明できます。見た目だけでなく、ユーザーが使いやすいか、情報が伝わりやすいかという視点でデザインを組み立てます。

コンテンツ制作の専門性

「何を載せるか」「どう書くか」という部分でも、プロの知識と経験が活かされます。業界やターゲットに合わせた文章の書き方、写真の選び方や撮影方法、情報の優先順位の付け方など。

お客様が本当に知りたい情報は何か、どんな言葉で表現すれば伝わりやすいか。これらは実は、デザイン以上に重要な要素だったりします。

戦略的な提案

単にホームページを作るだけでなく、「このホームページで何を達成したいのか」という目的に合わせた構成や機能を提案できます。お問い合わせを増やしたいのか、商品を販売したいのか、ブランディングを重視するのか…目的によってアプローチが変わってきます。

アフターフォローと更新

ホームページは作って終わりではありません。定期的な更新、セキュリティ対応、トラブル時のサポートなど、継続的なメンテナンスが必要です。

結局、どちらを選ぶべき?

「じゃあ、WIXなどのDIYツールは使わない方がいいの?」というと、そうではありません。大切なのは適材適所だと思います。

DIYツールがおすすめのケース

  • とりあえず簡単なホームページが欲しい
  • 予算をできるだけ抑えたい
  • ホームページ制作を楽しみたい
  • 更新頻度が高く、自分で管理したい

プロに依頼した方が良いケース

  • ビジネスの売上に直結するホームページが欲しい
  • 専門的なSEO対策が必要
  • ブランディングを重視したい
  • 時間をかけずに高品質なサイトが欲しい

長崎のホームページ制作会社として思うこと

地方でWeb制作会社をやっていると、「できるだけコストを抑えたい」という事業者さんの気持ちもよく分かります。でも同時に、「ホームページで売上を伸ばしたい」「地域のお客さんにもっと知ってもらいたい」という想いも強く感じます。

大切なのは、自分の目的と予算に合わせて最適な選択をすることだと思います。DIYツールで十分な場合もあれば、プロに依頼した方が結果的にコストパフォーマンスが良い場合もあります。

「まずは自分でやってみて、行き詰まったらプロに相談する」というのも一つの方法ですし、「最初から戦略的にプロと一緒に作り上げる」というのも良いアプローチだと思います。

まとめ

WIXなどのDIYツールが素晴らしいのは間違いありませんが、「簡単」と「簡単にクオリティの高いものが作れる」は別の話。ツールが進化しても、デザインセンスやマーケティング知識、そして何より「何のためにホームページを作るのか」という戦略的思考は、まだまだ人間にしかできない部分だと感じています。

もしホームページ制作で悩んでいることがあれば、DIYかプロかに関わらず、お気軽にご相談ください。その人に最適な方法を一緒に考えさせていただきます(^^)

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この記事を書いた人
T.kawano

T.kawano

宮崎生まれ、宮崎&長崎育ち。長崎西高、長大経済学部卒。
在学中からWeb業に従事して約20年。人生の半分以上をWebに注いできました。

デザインからライティング、撮影、プログラミングまでやっており、専門家としてセミナーをしたり、Webでお困りの方の相談にも乗ってきました。

「話す・動く・作るWebディレクター」として活動中。
器用貧乏を逆手に取り、ITの力を活用して少数精鋭の組織で動いています。

三児と一猫の父。趣味は「お笑い」「アニメ(狭く深く)」「バドミントンとそれに必要なトレーニング」
「優しく」「仕事ができ」「面白い」人間を目指して日々精進中。