LINEリアクション機能の進化から考える、コミュニケーションの「ちょうどよさ」

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「あれ、LINEのリアクション、なんか変わってない?」

最近、実はこれ、LINEが5月29日に発表したリアクション機能の大幅アップデートによるもの。これまで6種類のデフォルト絵文字しか使えなかったリアクションが、なんと全てのLINE絵文字—24万3000種類以上!—に対応したんです。

LINE告知サイトより

私たちは普段、メールやチャットなど様々なツールで仕事でもプライベートでもコミュニケーションを取っていますが、この変化から見えてくるのは「デジタルコミュニケーションの絶妙なバランス感覚」なんじゃないかと思うんです。

そもそも、なぜリアクション機能が人気なのか?

LINEのリアクション機能の魅力は、何といってもその「ちょうどよさ」にあります。

メッセージを長押しして絵文字をポンと送るだけ。相手に通知も行かないし、返信を強要するわけでもない。深夜に「お疲れさま」のメッセージが来た時、「ありがとう」と返すほどでもないけれど、何も反応しないのも味気ない…そんな時にリアクションは絶妙な役割を果たしてくれます。

私の所属しているバドミントンのクラブでも誰かの言葉に一人ずつ返答をしていたら通知ラッシュになるし、元のメッセージが埋もれてしまう可能性があります。なのでこのリアクション機能が出た時は「なんてちょうど良いサービスなんだ」と思いました!

実際、全世界で1日5000万回、そのうち日本だけで2500万回も使われているというデータからも、この「軽やかなコミュニケーション」へのニーズの高さが分かります。特に10代の利用率が高く(男性63.8%、女性78.2%)、デジタルネイティブ世代にとっては当たり前のコミュニケーション手段になっているんですね。

「6種類では物足りない」という声から生まれた今回のアップデート

これまでのリアクションは、NICE(いいね)、AMAZING(すごい)、LOVE(ハート)など6種類の表情だけでした。確かにシンプルで分かりやすいのですが、ユーザーからは様々な要望が寄せられていたそうです。

「表情がカジュアルすぎて送れない時がある」 「仕事で使える表現が欲しい」 「好きなキャラクターを使いたい」

確かに私も仕事でLINEのやりとりをすることもあるため、カジュアルすぎる表現では使いにくいし、プライベートでもグループ内でそこまで知らない相手にリアクションをする際にフランクすぎるリアクションはしにくいと考えていました。

1割を埋める気の利いたサービス。それが本当に必要かについても考えてみる

LINEのメッセージやりとりはそもそも色々と気が利いていて、リアクションの機能追加の時点ですでに9割は満足のいくサービスだと言ってもいいと思います。

しかしそれに奢ることなく、残りの1割を満足してもらうために機能改善に努めるという企業努力は本当に頭が上がりません。
そのおかげで人とのコミュニケーションが豊かになり、ミスコミュニケーションが起こりにくくなるということは本当に素晴らしいことだと思います。

一方で、機能が増えすぎることの弊害についても少し考えてみたいと思います。
例えばFacebookのいいね機能。以前は「いいね」ボタンだけだったのが、今では「いいね」「超いいね」「うけるね」など6種類のリアクションが選べるようになりました。確かに表現の幅は広がったのですが、「どのリアクションを選ぶべきか迷う」「相手がどの意図でそのリアクションを選んだのか分からない」といった新たな悩みも生まれています。
選択肢が増えることで生まれる「選択疲れ」や「解釈の複雑化」は、デジタルコミュニケーションの進化における永遠のテーマかもしれません。X(旧Twitter)でも、いいね以外のリアクション機能の導入が議論されることがありますが、シンプルさを保つかどうかで慎重になっているのも、こうした背景があるからでしょう。

ですので、「気が利く」と「シンプル」のバランスは常に考えないといけないのでしょうね。

「さりげなさ」と「豊かさ」の両立

今回のアップデートで興味深いのは、LINEが「シンプルな操作性による手軽さ」「非通知や小さなUIによるさりげなさ」という既存の価値に、「絵文字のバリエーション追加による豊かさ」を加えたと発表していること。

これって、コミュニケーションツールとしての本質を見失わずに、機能を拡張していく姿勢だと思います。機能が増えたからといって複雑になるのではなく、むしろ「より自然に、より気持ちよく使える」方向に進化している。

ビジネスの情報発信でも、同じことが言えるかもしれません。「伝えたいことがたくさんある」からといって、一度に全部詰め込むのではなく、相手にとって「ちょうどよい分量」「ちょうどよいタイミング」で届けることの方が、結果的に伝わりやすいものです。

小さな変化が生む、大きなコミュニケーションの変化

リアクション機能の表示方法も微調整されました。複数の絵文字が重なって表示されていたのが、少し間隔を空けて表示されるように。一見小さな変更ですが、「送られた絵文字の表情がより分かりやすくなる」という配慮が込められています。

こうした細やかな改善って、Web制作でもとても大切な視点です。ユーザーが「なんとなく使いやすい」「なんとなく気持ちいい」と感じる体験は、実はこうした小さな積み重ねから生まれてくるものなんですよね。

これからのコミュニケーションを支える技術

24万種類を超える絵文字が使えるようになったリアクション機能。これは単なる機能追加を超えて、「デジタル上でのコミュニケーションをより人間らしく、より豊かにする」という挑戦なのかもしれません。

私たちがホームページやアプリを作る時も、「技術的にできること」と「ユーザーが本当に求めていること」の間に、ちょうどよい着地点を見つけることが大切。LINEの今回のアップデートは、その良いお手本になりそうです。

毎日何気なく使っているコミュニケーションツールの進化から、改めて「伝える」ことの奥深さを感じた出来事でした。皆さんも新しいリアクション機能、ぜひ試してみてください(^^)

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この記事を書いた人
T.kawano

T.kawano

宮崎生まれ、宮崎&長崎育ち。長崎西高、長大経済学部卒。
在学中からWeb業に従事して約20年。人生の半分以上をWebに注いできました。

デザインからライティング、撮影、プログラミングまでやっており、専門家としてセミナーをしたり、Webでお困りの方の相談にも乗ってきました。

「話す・動く・作るWebディレクター」として活動中。
器用貧乏を逆手に取り、ITの力を活用して少数精鋭の組織で動いています。

三児と一猫の父。趣味は「お笑い」「アニメ(狭く深く)」「バドミントンとそれに必要なトレーニング」
「優しく」「仕事ができ」「面白い」人間を目指して日々精進中。