ホームページにAI画像やフリー素材を使うべきか?~リアルとイメージのバランスを考える~
先日、病院のホームページリニューアルの提案をした際に、興味深い議論が生まれました。
受付で笑顔で患者さんに対応するスタッフの様子など、AI画像やフリー写真素材を活用したイメージをデザインに取り入れた提案をしたところ、「本物と違うので良くないのでは」というご意見をいただいたのです。
この意見は確かにごもっともで、事実とは異なる表現という点では間違いありません。一方で、ホームページの役割を考えると、また違った視点も必要だと感じています。
「事実のみ」で作るホームページの限界
もし全てを事実だけで表現しようとすると、どうしても限界が出てきてしまいます。
例えば、現在の受付の写真をそのまま使った場合、新しくない室内であったり、表情が難しかったり、設備が古く見えてしまったりすることがあります。(プランによっては撮影場所を綺麗にし、照明も使ってプロのカメラマンが行うこともありますが、そうでないケースの方が多いです)また、患者さんのプライバシーの問題もあるため、実際の診療風景を撮影するのは難しい場面も多いでしょう。
その結果、どうしてもネガティブな印象のホームページになってしまう可能性があります。これは病院側にとっても、患者さんにとってもメリットがあるとは言えません。
ホームページの本来の役割とは
ホームページの役割を改めて考えてみると、「情報を正確に伝える」ことと同時に「安心感や信頼感を与える」ことも重要な要素です。
特に病院のホームページの場合、患者さんが初めて来院する前に「この病院は安心できそうか」「スタッフは親切そうか」「清潔な環境か」といったことを判断する材料になります。
AIで作成したイメージ画像は、確かに「その瞬間の事実」ではありませんが、「病院が目指している理想の姿」「患者さんに提供したいサービスの品質」を表現する手段として考えることもできます。
これは何もAI画像に限った話ではなく、一般的に使われているフリー写真素材についても同様です。多くのホームページで使用されている「明るい病院の待合室」や「親切そうな医療スタッフ」の写真も、実際にはその病院とは無関係のモデルさんや他の施設で撮影されたものであることも多いんです。
イメージ画像使用の適切な方法
もちろん、何でもAI画像やフリー写真で済ませれば良いという話ではありません。大切なのは、適切な使い分けとバランスです。
例えば
- 院長やスタッフの紹介には実際の写真を使用
- 建物の外観や院内の実際の様子も、きちんと撮影した写真を使用
- 診療機器や設備なども実際のものを撮影
- 一方で、「理想的な診療風景」や「患者さんとスタッフの良好な関係」などは、プライバシーに配慮しつつイメージ画像で表現
このような使い分けにより、「事実に基づいた信頼できる情報」と「安心感を与えるイメージ」の両方を提供することができます。実際の院内写真で現実をお見せしながら、イメージ画像で理想の医療サービスの姿も表現するという、バランスの取れたアプローチです。
他業界での事例
実際、多くの企業のホームページでは、イメージ画像やフリー写真素材が活用されています。
例えば、保険会社のサイトで「幸せそうな家族」の写真、銀行のサイトで「相談中の親切なスタッフ」の写真などは、必ずしもその会社の実際の顧客や社員ではないことが多いでしょう。これらはフリー写真素材やモデルを使った撮影で作られていることがほとんどです。でも、それらは「このサービスを利用することで得られる理想的な状況」を表現するために使われています。
AI画像も、従来のフリー写真素材と同じような位置づけで考えることができます。むしろAI画像の方が、より具体的な要望に合わせたイメージを作成できるという利点もあります。
誤解が生まれにくい配慮は必要
ただし、誤解を招かないよう適切な表記をすることは重要です。
使っていない機械の写真にしたり、「○○があるから来たのに実際と違った」となってしまっては逆効果の可能性も出てしまいますよね。実際の院内風景とイメージ画像の塩梅を使い分ける必要があります。
しかし、こういった意見を言ってくれることはとても助かるんですよね。私もなんとなく思っていたことを言語化し改めてホームページ制作で大事なことを振り返ることができます!
ご指摘いただいた点も踏まえて、今後も事実とイメージのバランスをしっかりと意識したホームページ制作をやっていきます。(^^)