昭和レトロな団地が、まちづくりの拠点に—「魚ん町+」グランドオープン!
長崎市魚の町。名前からしてインパクトのあるこの町に、戦後すぐの1949年に建てられた団地がありました。その名も「旧魚の町団地」。戦後の住宅不足を補うために建設された全国共通の“48型”という型の鉄筋コンクリート造の公営住宅です。
全国に残る同型の団地は、今やわずか5棟。その中でも特に保存状態が良かったこの建物が、長崎で新たな命を吹き込まれ、「魚ん町+(うおんまちプラス)」として生まれ変わりました。
魚の町(うおのまち)」の由来
長崎市の「魚の町(うおのまち)」という地名は、その歴史的背景に由来しています。かつてこの地域には魚市場があり、多くの魚屋が集まっていたため、初めは「うおや町」と呼ばれていました。その後、「いまうお町」などの名称を経て、最終的に「魚の町」となりました。
また、昭和38年(1963年)には、旧本大工町の全域と今魚町・酒屋町・紺屋町の各一部が合併し、新たに「魚の町」という町名が制定されました。
このように、「魚の町」という地名は、地域の歴史や文化を反映し、かつての魚市場の存在を今に伝えています。
解体の予定から一転、リノベーションの道へ
実は当初、この建物は老朽化により解体の方針だったそうです。しかし、戦後の建築としての価値、歴史的な背景、そして残っている数の少なさから「このまま壊すのは惜しい」という声が上がり、活用・保存の方向に舵が切られました。
その想いに応える形で公募が行われ、選ばれたのが、長崎市出身の1級建築士・伊東優さんを中心としたメンバーが運営する「ココトト合同会社」です。
2023年の夏から改修工事が始まり、設計・運営・まちづくりのすべてを担う体制のもとでプロジェクトは動き出しました。
「魚ん町+」に込められたメッセージ
新しく名付けられた「魚ん町+」という名前には、いくつもの意味が込められています。
まず「魚ん町」は、もともとの町名「魚の町」を長崎の方言っぽく柔らかくしたもの。そして「+(プラス)」には、この場所に集まる人々が加わることで、新たな魅力や可能性が生まれる…という未来への希望が込められています。
ロゴには可愛らしい魚のマークもあしらわれていて、どこか懐かしく、それでいて親しみやすい雰囲気に仕上がっています。
4月6日、ついにグランドオープン
そしてこの春、4月6日(土)に待ちに待ったグランドオープンが行われました。
当日は多くの関係者や市民が訪れ、注目の施設やテナントをいち早く体験。改修を担当したスタッフや関係者の想いを共有しながら、建物に込められた歴史や新しい可能性に触れる一日となりました。
グランドオープンでは、昭和レトロな外観と、現代的な使いやすさを兼ね備えた内部空間が注目を集め、「住んでみたい」「こんな場所ができて嬉しい」といった声もあがっていたそうです。
また、かつて県営住宅だったとは思えないほど、シンプルで洗練されたデザインに生まれ変わった内装も大きな話題に。
昭和の空気感を大切にしながら、そこに現代の「使いやすさ」や「交流の場」としての設計が加わり、まさに「古くて新しい場所」になったことを、多くの人が実感した一日でした。
まちづくりの拠点としての「魚ん町+」
ただ建物が新しくなっただけではありません。「魚ん町+」は、これから“人が集う拠点”として、さまざまな機能を持つ場になっていきます。
1階には開放感のあるシェアキッチン、シェア型書店、助産院、直営のコワーキングスペースが整備され、来訪者と地域住民が自然と混ざり合える場を目指しています。
2〜3階部分は、住居・事務所・民泊などとして活用できるよう整備されており、現在もテナントの募集が続いています。
また、5月中旬には、昭和40年代の新婚家庭や中高年の暮らしをイメージした宿泊施設もオープン予定。長期滞在の観光客や、地域と関わりたい都市部の人たちの拠点としても注目されています。
ココトト合同会社の田中さんは、「子どもからお年寄りまで来てくれて『いいね』って言ってもらえたのがすごく嬉しかった。ここで何かを始めたいという声が少しずつ広がっていくのが楽しみです」と話していました。
長崎らしさを未来につなぐ
全国的にも珍しい“団地のリノベーションプロジェクト”。しかも舞台は、歴史と個性が詰まった長崎です。
長崎らしさを残しながら、次の世代に繋がる新しい形で再生された「魚ん町+」は、これからの地域活性やまちづくりの象徴的存在になるかもしれません。
「ここに集まる人が主役になる町をつくりたい」
そんな想いが込められたこの場所が、これからどんな景色を見せてくれるのか、楽しみに見守っていきたいですね。
cocototo
https://coco-toto.jp/
T.kawano
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