半導体ってそもそも何?サプライチェーンって何?
近年、半導体の需要が急速に拡大しています。スマートフォンや自動車、家電製品など、私たちの生活に欠かせない半導体。世界的な供給網の変化に伴い、国内でもその生産拠点の強化が求められています。
そんな中、長崎県は2025年度の予算案で 過去最大規模となる1億1,000万円 を半導体産業の支援に投入することを決定しました。これは、県内の産業振興にとって非常に大きな一歩となるでしょう。
そもそも半導体って何?
半導体とは、電気を通す 「導体」(金属など)と、電気を通さない 「絶縁体」(ゴムやガラスなど)の中間的な性質を持つ物質のことを指します。この特性を利用して作られるのが、集積回路(IC) や マイクロチップ です。
現代社会のあらゆる電子機器には半導体が使われています。例えば…
- スマートフォンやパソコンの CPU
- 自動車の 制御システム
- 家電(テレビ、冷蔵庫、エアコンなど)
- 医療機器、産業ロボット、AI技術
要するに、「半導体がなければ現代のデジタル社会は成り立たない」と言っても過言ではありません。そんな重要な技術だからこそ、日本国内でも半導体の生産拠点を強化し、安定供給を目指す動きが活発になっています。
半導体産業の拡大と長崎県の取り組み
長崎県の半導体関連産業は、すでに3,200億円規模 となり、造船業に次ぐ主要産業へと成長しています。特に、県央地域では ソニーグループ や SUMCO(シリコンウエハ製造)といった大手企業の事業拡大が進んでおり、さらには 京セラ の新工場建設も計画されています。
県はこれに加え、新たな工業団地の整備を進め、「アンカー企業(中核となる企業)」の誘致を目指しています。アンカー企業の存在は、地元企業への発注増加や雇用の創出に直結し、地域経済全体に波及効果をもたらします。
また、長崎県は 2030年までに売上高1兆206億円・雇用者数8,860人 という目標を掲げ、半導体産業のさらなる発展を目指しています。
サプライチェーンとは?
「サプライチェーン」とは、原材料の調達から、製造・流通・販売・消費に至るまでの一連の流れ のことを指します。特に半導体産業においては、多くの工程が分業化されており、さまざまな企業が関わることで成り立っています。
半導体のサプライチェーンには以下のような段階があります。
- 素材供給(シリコンウエハ、化学薬品など)
- 設計・製造(TSMC、Intel、Samsungなど)
- 後工程(パッケージング・テスト)
- 出荷・販売(電子機器メーカーが製品化)
このサプライチェーンがしっかり機能しないと、半導体の生産に大きな影響が出てしまいます。例えば、近年の「半導体不足」は、世界的な供給網の混乱によって生じたものです。
長崎県が目指しているのは、このサプライチェーンを県内に整備することで、国内外の需要をしっかり取り込める体制を作ること です。
サプライチェーンの広がりが不足という課題
しかし、大手企業が進出しても、県内の地元企業がその需要に対応できる体制を整えなければ、せっかくのビジネスチャンスを逃してしまう可能性があります。
現状、長崎県の半導体産業は 出荷額ベースでは一定の規模 を持っていますが、他の地域と比べると 事業所数が少なく、サプライチェーンの広がりが不足している という課題があります。
この点について、県は地元企業の支援策を強化することで解決を図っています。
県の支援策:設備投資・人材育成の強化
半導体分野での成長には、 量産体制の構築や品質管理の強化 が不可欠です。そこで、2025年度の予算案では、以下の支援策が打ち出されました。
- 地元企業の設備投資を支援し、大手企業からの受注機会を増やす
- 半導体産業に関する専門知識・技術を学ぶリスキリング(学び直し)の受講料を補助
特に リスキリング支援 は重要なポイントです。技術革新が進む半導体業界では、既存のスキルだけでは対応できないケースも多く、新たな技術習得が求められます。こうした環境変化に適応できる人材を育成することが、地域全体の産業発展にとって不可欠です。
地元企業の期待と今後の展望
実際に半導体関連機器を製造する 伸和コントロールズ九州事業所(大村市) では、2027年の新工場稼働に向けて準備が進められています。同社の大坪執行役員は、「できる限り地場の企業と仕事をしたい」 と語り、県の企業支援策によるマッチングに期待を寄せています。
また、産学官連携の「ながさき半導体ネットワーク」の会長であり、長崎大学の木村教授は、「サプライチェーン構築と人材育成は産業成長の足場固めとして重要」 としつつ、今後の課題として 水資源の確保 を挙げています。半導体製造には大量の水が必要であり、浄水技術の開発も含めた支援体制の整備 が求められます。
長崎県の半導体戦略が持つ可能性
今回の予算案は、長崎県が半導体産業を本格的に成長させるための「基盤整備」 となるものです。
- 大手企業の進出が続く中、地元企業のサプライチェーン参入がカギ
- 設備投資や人材育成の支援で、長崎県全体の競争力を高める
- 2030年までに売上高1兆円規模を目指し、持続的な成長を促す
この動きがうまく機能すれば、長崎県は 九州の半導体産業の重要拠点 となり、地域経済の活性化にもつながるでしょう。今後の展開に注目ですね(^^)
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T.kawano
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