たった一行で「情景」を支配する、ネットの天才たちへの嫉妬

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SNSを眺めていると、時折、言葉の刃で胸を突かれるような感覚に陥ることがあります。それも、何十万フォロワーもいる有名人ではなく、ふとした拍子に流れてきた「一般の方」のつぶやきに、です。正直に言いましょう。「悔しい……!」と。

先日見かけた、ある方の一行がまさにそれでした。

「代車でショッピングモールに来ました。私の車はどれ?」

この短すぎる一行を目にした瞬間、私の脳内には一瞬で鮮やかな情景が浮かび上がりました。

なぜ、この一行に「センス」が爆発しているのか

このつぶやきの何が素晴らしいのか。Webやブログで「いかに読ませるか」を日々考えている身として分析してみると、この一行には「最高のエンターテインメント」が凝縮されていることが分かります。

  • 「代車」という絶妙な設定: 自分の車じゃないから、まだ脳に馴染んでいない。この「ちょっとした違和感」が物語の起点になります。
  • 「ショッピングモール」という広大な舞台: 膨大な数の車が並ぶ駐車場。そこで自分の(今の)車を見失う絶望感が透けて見えます。
  • 圧倒的な「余白」: 詳しい説明は一切ありません。でも、読んだ瞬間に「あるある!」と共感させ、広大な駐車場で呆然と立ち尽くすその人の姿を想像させ、笑いに変えてしまう。

文字数にしてわずか20文字程度。私たちが1,000文字、2,000文字と記事を書いて必死に伝えようとしている「感情」や「映像」を、この人は指先一つのひらめきで超えていってしまったのです。

「伝わる」の正体は、説明ではなく「映像」

私たちは、何かを伝えようとすると、ついつい説明を重ねてしまいがちです。
「今日は修理のために代車を借りていて、いつもの癖でショッピングモールに来たのはいいけれど、駐車場のあまりの広さに自分が今日何に乗ってきたか忘れてしまって……」

……ね? 説明すればするほど、あの「キレ」が消えて、野暮ったくなってしまいます。件のあの一行は、説明をすべて削ぎ落とし、読者の脳内に直接「映像」を叩き込んだ。だからこそ、一瞬で笑いが生まれたのです。

これこそが、言葉の持つ本当の力であり、私たちがWebでの情報発信において目指すべき「究極の形」の一つだと思い知らされました。

いつか「その一行」を紡げる自分になりたい

あまりにも鮮やかすぎるセンスに、敗北感を感じながら思いました。
「私も、こんな風になりたい」と。

難しい言葉を並べることや、最新の技術を語ることは、勉強すればできるかもしれません。でも、日常の何気ない風景を切り取って、たった一行で人の心を動かしたり、クスッとさせたりするセンスは、感性を磨き続けなければ届かない領域です。

Web屋として、文章を書く人間として。ネットの海に漂う名もなき天才たちのつぶやきに刺激を受けながら、今日も私は「もっといい言葉はないか」と、もがき続けようと思います(^^)

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この記事を書いた人
T.kawano

T.kawano

宮崎生まれ、宮崎&長崎育ち。長崎西高、長崎大学経済学部卒。
在学中からWeb業に従事して約20年。人生の半分以上をWebに注いできました。

デザインからライティング、撮影、プログラミングまでやっており、専門家としてセミナーをしたり、Webでお困りの方の相談にも乗ってきました。

「話す・作るWebディレクター」として活動中。
器用貧乏を逆手に取り、ITの力を活用して少数精鋭の組織で動いています。

三児と一猫の父。趣味は「お笑い」「アニメ(狭く深く)」「バドミントンとそれに必要なトレーニング」
「優しく」「仕事ができ」「面白い」人間を目指して日々精進中。