五島列島でドローンが医薬品を配送!これからの社会を変えるドローンの可能性

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先日、長崎県新上五島町で興味深い実証実験が公開されました。ドローンで医薬品を島から島へ運ぶという実験です。

福江島を出発した荷物が新上五島町の港でドローンに積み替えられ、上五島病院へ届けられる。海を越えてドローンが医薬品を運ぶ様子は、まさに未来の物流を感じさせるものでした。

全国初の「範囲内飛行」が実現

今回の実証実験で注目すべきは、ドローンの「レベル4飛行」が行われたことです。レベル4飛行とは「人がいる場所での目視外飛行」のこと。つまり操縦者が目で見ることができない遠くの場所でも、人がいるエリアの上空を自動で飛ばすことができるということです。

これまでレベル4飛行は、経路ごとに許可を得る「線形飛行」で行われてきました。しかし今回は全国で初めて、範囲内での飛行に許可を得て実証が行われたそうです。これは大きな前進ですね。

長崎県は2024年、福島県と共に「新技術実装連携”絆”特区」の指定を受けています。離島や半島地域を多く抱える長崎県だからこそ、ドローンの活用を積極的に進めていこうという姿勢が感じられます。

実証実験を主導する豊田通商の関連会社「そらいいな」は、2026年2月にも五島市で配送実験を行う予定とのこと。着実に実用化に向けて進んでいるんですね。

他の地域でもドローン配達が進んでいる

実はドローン配達は、日本の他の地域でも実用化に向けた動きが活発化しています。

千葉県勝浦市では、出前館アプリと連携したドローン配達サービスが2023年3月から始まっています。現在は受付中止中のようですが、再開された時にはより使いやすいサービスになるでしょう。

東京都奥多摩町では、日本郵便が2023年3月にドローン配送の実証実験を行いました。奥多摩郵便局から山間部の住宅まで約9kmの飛行距離を約18分で往復したそうです。これは日本初のレベル4飛行でした。

山形県長井市、北海道上士幌町、愛知県佐久島など、各地で実証実験が行われています。特に過疎地や離島、山間部では、トラックによる配送が困難なエリアも多く、ドローン配送への期待は大きいです。

2022年12月にレベル4飛行が解禁されたことで、地方だけでなく都市部でもドローン配送の実現化の期待が高まっています。政府の計画では、2023年前半には過疎地や離島地域でレベル4飛行を実現させ、2023年後半からは人口が多い都市部で飛行を実現できるように法整備や管理システムの整備を進めるとしています。

ドローンは配達だけじゃない

ドローンの活用は配達だけにとどまりません。実は様々な分野で既に活躍しているんです。

農業分野では、農薬散布や肥料散布にドローンが使われています。従来は人が背負って散布していたり、産業用無人ヘリコプターを使っていましたが、ドローンの方が小回りが利いて、狭い田畑でも対応可能です。実際に、作業時間が3分の1に短縮されたという事例もあります。

また、ドローンに搭載したカメラで農作物の生育状況を撮影し、画像を分析することで効果的な施肥を行えるようになり、収量が10.3%増加したという報告もあります。

建設・土木分野では、測量にドローンが活用されています。従来は測量機器を人が持ち歩いて現場の隅から隅まで歩き回っていましたが、ドローンを使えば上空から撮影するだけで済みます。広範囲で高精度の測量が可能になり、労働時間とコストの削減に大きく貢献しています。

インフラ点検でも橋やダム、ビルの外壁といった高所での点検にドローンが使われています。作業員を危険にさらす必要がなくなり足場やクレーンの手配などの事前準備も削減できるので、安全性の確保とコスト削減の両方が実現できています。

災害時には、被災状況の確認や孤立地域への物資運搬にドローンが活用されています。ヘリコプターよりも素早く出発できて、広範囲にわたる調査が可能です。人が立ち入れない危険な場所でも、ドローンなら上空から状況を確認できます。

火山の観測にもドローンが使われていて、火口付近の危険なエリアでも熱赤外線カメラを搭載したドローンで観測を行っています。

鳥獣被害対策にもドローンが活用されていて、赤外線カメラを積んだドローンが上空からイノシシなどの生息数や分布を撮影し画像解析システムで分析することで、効果的な対策が取れるようになっています。

ドローンが社会に根付く未来

こうしてみると、ドローンは既に私たちの社会の様々な場面で活躍していることが分かります。

配送に使えば人手不足の解消になるし、交通渋滞の緩和にもつながります。上空を飛ぶので最短距離で移動できて、配達時間も短縮できます。災害時には孤立地域への物資運搬が迅速に行えます。

もちろん課題もあります。安全性の確保、操縦者の育成、運用コスト、天候や電波環境への対応など、解決すべき点は多いです。でも確実に技術は進歩していて、実用化に向けて着実に歩みを進めています。

私はこういったドローンの活用が社会に根付いていくのは、非常に便利だし良いことだと思っています。

長崎の離島で医薬品を運ぶドローン。山間部の田んぼで農薬を散布するドローン。災害現場で被災状況を確認するドローン。どれも人の役に立ち、社会をより良くする技術です。

世界のドローン物流市場規模は、2021年時点で約3.5億ドル、2022年には約5.4億ドルと急速に伸びていて、2030年には183億ドルにも達するといわれています。ドローンによる配送が当たり前になる社会も、そう遠くないのかもしれません。

長崎県が「新技術実装連携”絆”特区」として、こういった新しい技術の実証実験を積極的に受け入れているのも素晴らしいことですね。五島列島での実験が成功して、いつか私たちの日常生活の中でもドローンが当たり前のように飛んでいる、そんな未来が楽しみです。(^^)

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この記事を書いた人
T.kawano

T.kawano

宮崎生まれ、宮崎&長崎育ち。長崎西高、長崎大学経済学部卒。
在学中からWeb業に従事して約20年。人生の半分以上をWebに注いできました。

デザインからライティング、撮影、プログラミングまでやっており、専門家としてセミナーをしたり、Webでお困りの方の相談にも乗ってきました。

「話す・作るWebディレクター」として活動中。
器用貧乏を逆手に取り、ITの力を活用して少数精鋭の組織で動いています。

三児と一猫の父。趣味は「お笑い」「アニメ(狭く深く)」「バドミントンとそれに必要なトレーニング」
「優しく」「仕事ができ」「面白い」人間を目指して日々精進中。