築74年の廃墟団地が満室に!「古いものを活かす」発想転換から学ぶビジネスのヒント
北九州市の門司港エリアで、築74年の”廃墟”のような団地が、なんと全34部屋満室になったというのです。
家賃はなんと1万円。条件は自分でDIY改装すること。
「そんな古い建物に誰が住むの?」と思うかもしれませんが、約4カ月で満室御礼。しかも入居者たちは、カフェ、バー、ブックカフェ、ベーカリー、果ては探偵事務所まで、個性的な店舗を次々とオープンさせているというから驚きです。
この「門司港1950団地」の成功事例から、私たちが学べるビジネスのヒントについて考えてみたいと思います。
「廃墟」が「夢を叶える場所」に変身
プロジェクトの概要
基本データ
- 築年数:74年(1951年竣工)
- 構造:A棟(4階建て24戸)+ B棟(2階建て10戸)
- 立地:人気観光地「門司港エリア」から車で5分
- 家賃:月1万円(3年間限定)
- 条件:入居者自身でDIY改装
プロジェクト名「渋沢プロジェクト」 日本資本主義の父・渋沢栄一にちなんで命名。古い建物をクリエイティブに改装し、新たに起業する人を育てることが目的。
入居者たちの多彩な挑戦
デイジーワールド(カフェ) 看護師の方(58)が月4回営業。2Kの空間をナチュラルテイストに改装。
ブックカフェ準備中 本好きの方(26)が自宅の本を多くの人に見てもらいたいと開店準備。
ミュージックバー準備中 定年退職した方(64)夫妻が長年の夢だった音楽好きが集まる店をオープン予定。将来的には子ども食堂のような形で音楽を聴かせたいという夢も。
その他 キッチンスタジオ、ベーカリー、探偵事務所など、個性的なテナントが続々と。
なぜ「廃墟」が満室になったのか?
1. 圧倒的な低コスト
月1万円という家賃は、人気観光地エリアの2K物件としては破格の安さ。起業を考えている人にとって、初期投資を抑えられることは大きな魅力です。
2. 自由度の高さ
自分でDIY改装できるということは、完全に自分好みの空間を作れるということ。賃貸では通常不可能なレベルの改装が許可されています。
3. 手厚いサポート体制
改装材料費の一部を管理会社が負担し、DIYの知識共有やサポートも受けられる。「丸投げ」ではなく「一緒に作り上げる」姿勢が魅力的です。
4. ストーリー性とロマン
「廃墟のような建物を自分の手で生まれ変わらせる」というストーリー性。SNS時代にはこうした「物語性」が大きな価値を持ちます。
5. コミュニティの形成
同じ志を持った人たちが集まることで、自然とコミュニティが形成される。孤独になりがちな起業の道のりで、仲間がいることは心強い支えになります。
「古いものを活かす」発想転換の価値
従来の考え方 vs 新しい考え方
従来の不動産活用 古い建物 → 取り壊し → 新築 → 高い家賃設定
渋沢プロジェクトの発想 古い建物 → 活かす → 低コスト改装 → 低家賃 + 高付加価値
この発想転換のメリット
事業者側
- 取り壊し費用不要
- 新築費用不要
- 社会貢献性のアピール
- 話題性による集客効果
入居者側
- 低い初期投資で起業可能
- 完全オリジナル空間の実現
- ストーリー性のある事業展開
- 同志との出会い
地域社会
- 空き家問題の解決
- 新たな観光資源の創出
- 地域経済の活性化
- 文化的価値の保存
地域活性化の新しいモデル
九州1万棟の空き家再生を目指す
プロジェクトを手がける森田さんの会社は、今後10年で九州にある1万棟の空き家を再生することを目標にしているそうです。
これは単なる不動産事業を超えた、社会課題解決型のビジネスモデルと言えるでしょう。
長崎でも応用できそうなアイデア
長崎にも古い建物や空き家がたくさんあります。この門司港の成功事例を参考に、長崎でも面白いプロジェクトができそうです。
長崎での可能性
- 古い洋館をクリエイター向けシェアスペースに
- 空き店舗を若手起業家の挑戦の場に
- 古民家をリモートワーク拠点に
- 廃校をIT企業のサテライトオフィスに
ビジネスで大切な「視点の転換」
問題を機会として捉える
この事例の最大の学びは「問題を機会として捉える視点の転換」かもしれません。
一般的な見方 築74年の廃墟同然の建物 = 負の遺産、問題
プロジェクトチームの見方 築74年の歴史ある建物 = 貴重な資源、機会
この視点の違いが、全く異なる結果を生み出しました。
私たちの仕事でも応用できる考え方
クライアントの「困った」を「チャンス」に
- 「予算がない」→ 創意工夫で差別化
- 「競合が多い」→ ユニークなポジショニング
- 「知名度がない」→ 親しみやすさで勝負
- 「古い業界」→ IT活用で一歩先行
私的にも大好きな考え方
客観的に書いてきましたが、私個人的にも古い建物の活用はとても好きな考え方です!
昨年、神奈川県横浜市野毛の飲食街でかなり古い鉄筋コンクリートのビルがあり、そのビルは解体が決まっていたようです。解体計画自体は変わりませんでしたが、ビルに「解体まで残り15○日」のようにカウントダウンとつけ、解体まで複数の店舗が入ってお酒やおつまみを出していたのがとても印象的です。
とても古いし綺麗ではない鉄筋コンクリートの建物でも、最後まで建物を活用してコミュニティの場にしているのがとても素敵だなと思いました。1人ではできないことでもたくさんの人が協力をすればこのようなこともできるのだなという可能性を感じましたね!
まとめ:古いものを活かす知恵
門司港1950団地の成功は、私たちに大切なことを教えてくれます。
新しいものを作ることだけが解決策ではない
古いものの価値を見直し、新しい視点で活用することで、思いがけない魅力が生まれることがある。そして、その魅力に共感する人は必ずいる。
制約は創造性を生む
限られた予算、古い建物、厳しい条件…一見マイナスに見える制約が、かえって創造性を刺激し、ユニークなアイデアを生み出すきっかけになる。
ストーリーには人を動かす力がある
単なる「格安物件」ではなく「夢を叶える場所への変身ストーリー」だからこそ、多くの人の心を動かした。
私たちも、新しい視点で価値あるものに変えるお手伝いができるよう、常に柔軟な発想を心がけていきたいと思います(^^)