無名だったメーカーが、なぜここまで?— エアドッグに学ぶ“販促方法”
以前から気になっていることがありました。
それは「Airdog(エアドッグ)」
空気清浄機です。
医療機関や公共施設でよく見かけるようになったこの製品。
商品の売り出しは
「全国12,000箇所の医療施設に導入」
これってすごくないですか?医療施設なんて精査も厳しい所にこんなに導入されているなんて…
以前からCMにインパクトがあって商品価格も10万以上して高いなーって思っていましたが、最近こんな導入件数を言うものだからさらに気になりました。
調べてみると、驚くほど多くの病院や自治体などに導入されていて、さらには「医療機関向け」としての信頼感すら確立している印象すらあります。
でも正直に言うと、数年前まではまったく聞いたことのないメーカーでした。
なぜ“無名”だったメーカーがここまで広く認知され、選ばれるようになったのか?
その仕掛けを探ってみると、私たちのような小さな会社にも参考にできる要素がたくさんあることに気づきました。
「空気をキレイにする」以上の付加価値
まず注目すべきは、Airdogのアプローチの仕方です。
単なる空気清浄機ではなく、「医療現場でも使えるレベルの空気清浄力」「花粉・ウイルス・PM2.5対応」「交換不要なフィルターでコスパが良い」といった“明確な強み”を分かりやすく伝えています。
特に「医療機関で採用されている」という実績は、他の製品と差別化する上で圧倒的な説得力があります。
しかもそれをきちんと広告や導入事例で可視化し、信頼の連鎖を作っているのです。
なぜ医療機関が採用するのか?
もちろん、製品自体の性能が良いというのは大前提としてあるでしょう。
ですが、医療機関はそれだけで採用を決めるわけではありません。
- 導入後のメンテナンスのしやすさ
- 維持コストの低さ(フィルター交換不要)
- 導入時の対応の丁寧さ・法人向けの販売体制
- 実証データや第三者機関の裏付け
こうした「製品以外の信頼要素」がしっかり整備されていたことも、後押しになっているようです。
そして、この“製品以外の部分”が実は、私たちのような中小企業でも十分に取り入れられるポイントだと感じました。
信頼は“積み重ね”と“見せ方”のセットでつくられる
個人が商品やサービスを選ぶ際に重要視するのは「他の人が使っているかどうか」「信頼できそうかどうか」。
この点においてAirdogは、
- 医療機関での採用実績
- 専門家のコメント
- 多くのメディア露出
- 分かりやすい機能訴求
などを通じて、「これだけ使われているなら安心」という空気を作ることに成功しています。
つまり“信頼は勝ち取るものではなく、作り出すもの”だということ。
これは我々のような会社でも同じ。
たとえ小規模でも、実績の積み重ねや導入事例の紹介、お客様の声の掲載、課題解決事例などを地道に発信していくことで、確実に「信頼の土台」は育っていくと感じています。
私たちがヒントにしたいポイント
Airdogの事例から学べることは、とても多いです。
- 製品やサービスの「強み」を明確に、わかりやすく見せること
- 実績(導入先・成果)をできるだけ具体的に打ち出すこと
- プロダクト単体ではなく、購入後のサポートや維持のしやすさもセットで伝えること
- 口コミやお客様の声を積極的に活用して“信頼の連鎖”を起こすこと
一つ一つは地味な作業ですが、どれも明日からでも始められることばかりです。
このようにAirdogのような存在に学べることは本当に多いなと感じた出来事でした。
皆さんも「最近よく見るな」と思った製品やサービスがあれば、ぜひ“なぜ選ばれているのか”を観察してみてください。
きっと、自分たちの仕事にも活かせるヒントが見つかると思います(^^)
…とここまでは自分達のヒントになるようなお話でしたが、せっかくなのでエアドッグについてもっと深掘りさせていただきます。(自分調べですが)
なぜエアドッグは売れたのか?
コロナ禍による空気清浄機需要の急増
2020年の新型コロナウイルスの流行により、「空気をきれいに保ちたい」というニーズが爆発的に高まりました。特に「ウイルス対策」に特化した製品への関心が高まり、従来の空気清浄機とは異なるテクノロジーを使っているエアドッグが注目を集めました。
「ウイルスも除去できる」訴求力
エアドッグは「0.0146μmの粒子まで除去できる」という性能をアピール。一般的なHEPAフィルターが捕集できる最小粒子(0.3μm)よりもはるかに小さいため、消費者に「ウイルスにも有効かも」と印象づけました。実際には、科学的根拠の受け取り方には議論もありましたが、マーケティング的には非常に効果的でした。
話題性のある販売戦略(テレビ通販・インフルエンサー)
テレビ通販で大々的に宣伝されました。他にも、インフルエンサーやYouTuberによる紹介で一気に口コミが広がり、SNSでも注目されました。
「洗えるフィルター」による差別化
多くの空気清浄機がフィルター交換式なのに対し、エアドッグは「フィルターを洗って繰り返し使える」という特徴があります。ランニングコストの低さが、コスパ重視の消費者に刺さりました。
米国発のブランドイメージ
エアドッグはアメリカ発のテクノロジー企業が開発した製品という触れ込みでした。「海外発の最新技術」→「信頼できそう」という連想を生みました(※実際の技術の詳細は賛否両論あり)。
賛否の声(レビュー・専門家の反応)
【ポジティブな意見】
「明らかにホコリやニオイが減った」「静音性が高く、稼働中の音が気にならない」「フィルター交換不要で経済的」
「アレルギーや花粉症の症状が緩和された気がする」
【ネガティブな意見】
「ウイルス除去の証明が不十分」「科学的な裏付けが不明確」「静電フィルターは目に見えない部分の性能評価が難しい」「本体価格が高すぎる(10万円前後)」「フィルター掃除が面倒で、長く使うほど衛生面が気になる」
→ “気がする”という感想が多く、実測や検証に基づいたレビューは限られている点が特徴です。
洗えるフィルターで「ウイルスレベル」は取れるのか?
私的にここは結構気になる所です。
TPAフィルターは、帯電させた電極に粒子を吸着させるので、「物理的に穴で止める」HEPAとは違い、小さい粒子も理論上は除去できる。
しかし、洗っても性能が持続するか、フィルターに付着したウイルスが洗浄で完全に除去されるのかという点には懸念があります。
つまり…
除去できるという理論と実際の使用環境のギャップがある。
洗浄後も完全に安全か?ウイルスは死滅するのか?という点に明確なエビデンスがない。
日本メーカーが「エアドッグ的な商品」を出せなかった理由
私的に日本のメーカーって優れていると思うんです。そのメーカー達よりも売れたイメージを出せているのがこの商品のスゴイ所でもあり、日本人としては悔しい所でもあります。そこで日本メーカーでは勝てなかった理由を考えてみました。
1. 技術革新に対する慎重さ
日本の家電メーカーは品質重視であるがゆえに、新技術の導入には 時間をかけて検証・認証・安全確認を行う文化があります。「TPAフィルター」のような新方式は、十分な検証がされていない段階では採用しない傾向が強い。となると 消費者からのクレームや健康被害のリスクを恐れるが故にチャレンジできなかったかもしれません。
2. 過去の成功体験による“枠の中”の発想
日本メーカーは長年、HEPAフィルター=正義という常識の中で製品を開発してきました。「空気清浄機といえばHEPA + 加湿」など、既存の成功パターンにとらわれやすく、エアドッグのような「フィルターを洗える」「静電式」などは、むしろ過去に否定された技術に近く、取り入れにくい土壌があるようです。
3. リスクを取って攻めるマーケティングが苦手
エアドッグは「ウイルス除去」「0.0146μmまで除去可能」など、かなり攻めた訴求をしています。それに対して日本メーカーは、法令やJIS基準に抵触しない範囲でしか表現できないため、どうしてもインパクトに欠けてしまいます。つまり、消費者の“心”ではなく“規格”に訴えがちなのでしょうか?
4. 社内の意思決定スピードが遅い
外資系ベンチャーのように「鶴の一声」で一気に製品化が進むのと違い、大企業では稟議や部門間調整に時間がかかるのも日本企業のデメリットかもしれません。コロナ禍のようなスピードが求められる時代に、スピード感のなさが仇になったともいえます。
コロナワクチンも日本メーカーではなく、海外メーカーのものが先に普及してしまったことも同じような考え方でしょうかね…
5. 「価格」と「型番」の設計思想が異なる
エアドッグは10万円以上の価格帯にも関わらず、1~2機種に絞って明確な特徴を打ち出しました。日本メーカーは細かい価格帯や型番で多数展開しがちで、メッセージが分散されてしまう。
このような点が勝負を決めてしまったのでしょうか…
しかしこのままで負けている日本企業ではありません。
日本メーカーの巻き返しと後追い製品の傾向
1. 「ウイルス対策」へのフォーカスが一気に加速
パナソニックはナノイーX搭載空気清浄機を前面に出し、「ウイルス抑制・菌除去」を明言し、エアドッグの「ウイルス除去」に対抗する形で、「ウイルスを“抑制”する微粒子水分子」を武器にしています。また、「エビデンス」や「実証実験」での裏付けを重視し始めています。
シャープはプラズマクラスターNEXTを搭載したプレミアムモデルを展開。「0.01μmレベルの粒子を除去」という表現で、静かにエアドッグに寄せた性能訴求もあるようです。これにより病院や保育園での導入実績も増加とのこと。
ダイキンは「ストリーマ除菌技術」を強化し、「フィルターを除菌する」という新しい視点をPR。空気中だけでなく、機器内部の衛生にも言及。これまでは花粉・PM2.5重視だった日本メーカーが、「ウイルス除去」「空間除菌」へ一気に方向転換した点が大きな変化だと言えます。
2. デザイン・使いやすさの見直し
エアドッグのスタイリッシュな見た目・シンプルな操作性が受けたことにより、国内メーカーもデザイン志向に変化してきました。パナソニックやシャープが白や木目調のインテリア家電風モデルを展開。日本メーカーも「実家っぽい空気清浄機」から「リビングに映えるガジェット」へと進化。
3. フィルターコストへの対応
エアドッグは「洗って使えるフィルター」で差別化していたが、実は分解して洗うのは大変との声もあります。これを逆手にとり日本メーカーは「10年交換不要」や「抗菌HEPAフィルター」など、“交換不要”に近い長寿命フィルターを打ち出す傾向に。実質的に洗えなくても、長寿命&性能保証で対抗しています。
4. 企業・法人向け市場での巻き返し
大手企業や病院・公共施設などへの法人導入実績をアピール。「信頼性」と「メンテナンスサポート」の強みを活かし、保育園や学校への導入を広げているようです。
…といったように、日本企業も頑張っています!
私の印象としてはエアドッグは「ツッコミ所はあってもアピールポイントと売り出しスピード」で勝負なのかなと。日本企業はクオリティを重視したり過去の成功例に縛られてしまって動きが鈍くなってしまった点はありますが、個人的には日本メーカーの安心感は私の中では大きいです。
しかしすごいですね、エアドッグ…
エアドッグは商品名や普及の速さ、導入件数はNo1かもしれませんが、私たちの企業はNo1である必要はありません。より納得のいくサービスをつくり、よりお客さまに選ばれ満足していただけるサービスを提供し、試行錯誤をしながら成長し続ける。この心構えこそが信頼を築いていくものだと思っています。
…とは言ってもNo1というものを1度でいいから味わってみたいですね(笑)
T.kawano
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