「バズる」の正体とは?SNS時代の情報拡散メカニズムとその危険性

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「今日のあの投稿、めちゃくちゃバズってるね!」「バズらせるにはどうしたらいいの?」こんな会話、日常的に聞くようになりましたよね。でも、この「バズる」って言葉、いつから使われるようになったのでしょうか。そして、なぜ情報が一気に拡散されることがあるのか、その仕組みについて考えてみたいと思います。

「バズる」の語源を知っていますか?

実は「バズる」は英語の「buzz(バズ)」から来ています。buzzは元々「ハチがブンブン飛び回る音」を表す言葉なんです。そこから転じて「ざわめき」「うわさ話」「話題になること」という意味で使われるようになりました。

つまり、ハチが忙しく飛び回ってブンブンと音を立てるように、情報があちこちで話題になって広がっていく様子を「バズる」と表現しているわけですね。言葉の成り立ちを知ると、なるほどと思いませんか?

なぜ情報が爆発的に拡散されるのか?

SNS時代になって、情報の拡散スピードは格段に速くなりました。でも、すべての投稿がバズるわけではありませんよね。バズる投稿には、実は共通した心理的な要素があるんです。

感情を動かす力 人は感情が動いたとき、その体験を誰かと共有したくなります。「面白い!」「驚いた!」「感動した!」「怒った!」など、強い感情を引き起こすコンテンツほど拡散されやすくなります。逆に、淡々とした事実だけの投稿は、なかなか拡散されません。

「これ、みんなに教えてあげたい」という気持ち 新しい発見や役立つ情報、知らなかった豆知識などは、「これ、みんなに教えてあげたい!」という親切心から拡散されます。人は本能的に、価値ある情報を周りの人と共有したがる生き物なんですね。

共感できる内容 「そうそう、これわかる!」「私も同じことを思ってた!」という共感を呼ぶ投稿も拡散されやすいです。多くの人が心の奥で感じていたことを言葉にしてくれると、「この人、私の気持ちを代弁してくれた!」という感情が生まれ、シェアしたくなるのです。

タイミングも重要な要素

バズるかどうかは、実はタイミングにも大きく左右されます。同じ内容でも、投稿する時間や社会情勢によって反応が全く変わってしまうことがあるんです。

多くの人がSNSを見ている時間帯、例えば通勤時間やお昼休み、夜のリラックスタイムなどは拡散されやすい傾向があります。また、話題になっているニュースや出来事に関連した投稿は、そのタイミングでバズりやすくなります。

バズる=ホームランみたいなもの?大谷選手から学ぶ

最近、大谷選手の記事を書きましたが、ふと「バズるってホームランに似てるな」と思ったんです。

野球選手がホームランを打つとき、狙って打つこともあれば、普通にバッティングしたら結果的にスタンドインということもありますよね。でも共通しているのは、日々の地道な練習とその瞬間への集中力です。

SNSのバズも同じで、「今日は絶対バズらせるぞ!」と意気込んで投稿しても空振りに終わることが多い一方、日頃からお客様のことを思って丁寧に投稿していると、ある日突然「大当たり」することがあります。

大谷選手が毎日のトレーニングを欠かさないように、SNSも継続的な発信が土台になっているんですね。ホームランを打てない日があっても、コツコツとバッターボックスに立ち続ける。そんな姿勢が大事なのかもしれません。

一度バズると「味をしめる」危険性

実際にバズを経験すると、その快感は想像以上に強いものです。いいねやシェアの数がどんどん増えていく様子を見ていると、「自分ってすごいんじゃないか?」という気持ちになってしまうことがあります。

バズの快感は中毒性がある 一度バズった投稿のリーチ数や反響を見ると、確かに気持ちが良いものです。普段は数十人にしか見られない投稿が、突然数千人、数万人に見られ、たくさんの反応をもらえる。この体験は、まるでアドレナリンが分泌されるような感覚を与えます。

問題は、この快感を忘れられずに「もう一度あの感覚を味わいたい」と思ってしまうことです。すると、本来の目的(お客様に価値ある情報を届けること)を忘れて、「バズらせること」が目的になってしまいがちになります。

狙いすぎると失敗しやすくなる理由 バズを意図的に狙おうとすると、往々にして以下のような問題が起きます:

  • より過激な内容に走ってしまう(注目を集めようと無茶をする)
  • 本来の企業らしさを失ってしまう(キャラクターがブレる)
  • タイミングを見誤る(流行に乗り遅れたり、不適切なタイミングで投稿する)
  • 不自然な投稿になる(作為的で魅力が薄れる)

最初にバズった投稿は、おそらく自然体で、本当に伝えたいことがあったから響いたのだと思います。でも、それを意図的に再現しようとすると、どうしても不自然になってしまうんですね。

「炎上」という最悪のバズもある バズを狙いすぎて最も怖いのは、「炎上」という形でバズってしまうことです。確かに炎上も一種のバズですが、企業にとっては大きなダメージとなります。

注目を集めたいがあまり、刺激的すぎる内容や、配慮に欠けた投稿をしてしまい、批判が殺到してしまうケースは少なくありません。一瞬の注目のために、長年築いてきた信頼を失うリスクがあることを忘れてはいけません。

初心に帰ることの大切さ もしバズを経験したなら、その瞬間に立ち返って考えてみてください。なぜその投稿が多くの人に響いたのか?おそらく、お客様のことを思って、本当に価値のある情報や体験を共有したからではないでしょうか。

バズは結果であって、目的ではありません。お客様に喜んでもらいたい、役に立ちたい、地域の魅力を伝えたいという純粋な想いが、結果的に多くの人の心を動かすのです。

一度バズったからといって、それが自分の実力だと過信せず、謙虚に、そして初心を忘れずに発信を続けることが大切ですね。

企業はバズを狙うべき?それとも自然に任せるべき?

最近、企業のSNS担当者の方から「どうしたらバズらせることができますか?」という相談をよく受けます。確かに、バズることで一気に認知度が上がり、売上につながることもありますが、一方でリスクもあります。

バズを狙いすぎることの危険性 バズを狙って過激な内容や炎上しそうなネタを投稿すると、思わぬ形で批判を浴びてしまうことがあります。「炎上」も一種のバズですが、企業にとってはマイナスの影響の方が大きくなってしまいますよね。

自然体の投稿が意外と響く むしろ、企業の人柄や温かさが伝わる自然体の投稿の方が、長期的には愛されるブランドを作ることにつながります。無理にバズを狙わず、お客様に本当に価値のある情報を丁寧に発信し続けることの方が大切だと感じています。

バズった後の対応で企業の姿勢が見える

もし投稿がバズったとき、その後の対応でその企業の真価が問われます。

謙虚な対応が好印象を生む バズった投稿に対して謙虚にお礼をしたり、新たなフォロワーを温かく迎えたりする対応は、さらに好印象を与えます。「調子に乗らない企業だな」「誠実な会社だな」という印象を持ってもらえるでしょう。

批判的なコメントへの対応 バズると同時に、批判的なコメントも増えることがあります。そんなとき、感情的に反応するのではなく、冷静で建設的な対応ができるかどうかで、企業の器が測られます。

バズった実例を見てみよう

ここで、実際にバズった事例をいくつか紹介してみたいと思います。企業名は伏せますが、どんなパターンでバズが生まれるのかを知っていただければと思います。

熊本県のトマト農家さんの高級トマトジュース 2024年に話題になったのは、熊本県のあるトマト農家さんが作った1本6000円の高級トマトジュースです。TikTokで農家ならではの温かみと商品へのこだわりが伝わる動画を投稿したところ、「こんな情熱的な作り手がいるジュースなら飲んでみたい!」と多くの人の心を掴み、わずか3日間で100本が完売してしまいました。

このケースの成功要因は、個人のストーリー性(農家の情熱)と、TikTokで流行の「商品を作る過程を見せる動画」がマッチしたこと。そして「高すぎて逆に気になる」という話題性があったことです。押し付けがましくない真面目な姿勢が、視聴者の応援したい気持ちを誘発したんですね。

寿司チェーンの「お寿司あーん」テンプレート ある寿司チェーンが「お寿司あーん」用のテンプレート画像素材を無料配布したところ、ペットや推しのアイドル、好きなキャラクターに「お寿司あーん」させる投稿が大量に生まれ、大きな話題となりました。

これは参加のハードルが低く、誰でも楽しめるアイデアだったことが成功のポイントです。企業が素材を提供し、ユーザーが自由に楽しんでシェアするという、まさにwin-winの関係が生まれていました。

大学生の「親切な駅員さん」投稿 企業の事例ではありませんが、ある大学生がエレベーターが壊れて困っていたベビーカーのお母さんに駅員さんが駆け寄り、協力して階段で運んでいる様子を投稿したところ大きな反響を呼びました。「世の中まだまだ捨てたもんじゃない」という温かいメッセージが多くの人の心を打ち、鉄道会社の公式アカウントも反応し、新聞のコラムにも掲載されました。

善意や感動を発信することが思わぬバズにつながり、その人の言葉が多くの人を動かす力になった素敵な例です。

まとめ:バズるより大切なこと

バズることは確かに魅力的ですが、一時的な話題性よりも、日々の誠実な情報発信を通じてお客様との信頼関係を築いていくことの方が、長期的にはずっと価値があります。

「バズらせよう」と意気込むのではなく、「今日もお客様に役立つ情報を届けよう」「地域の魅力を一人でも多くの人に知ってもらおう」という想いで発信していれば、自然と人の心に響く投稿ができるようになるのではないでしょうか。 (^^)

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この記事を書いた人
T.kawano

T.kawano

宮崎生まれ、宮崎&長崎育ち。長崎西高、長崎大学経済学部卒。
在学中からWeb業に従事して約20年。人生の半分以上をWebに注いできました。

デザインからライティング、撮影、プログラミングまでやっており、専門家としてセミナーをしたり、Webでお困りの方の相談にも乗ってきました。

「話す・作るWebディレクター」として活動中。
器用貧乏を逆手に取り、ITの力を活用して少数精鋭の組織で動いています。

三児と一猫の父。趣味は「お笑い」「アニメ(狭く深く)」「バドミントンとそれに必要なトレーニング」
「優しく」「仕事ができ」「面白い」人間を目指して日々精進中。