福岡の再開発「天神ビッグバン」に学ぶ、都市ブランディングの力
今回は福岡市が取り組む「天神ビッグバン」という再開発プロジェクトに注目してみたいと思います。
都市の成長やブランディングという視点から見ると、福岡のこの挑戦は、地方都市や地域ビジネスに関わる私たちにとっても示唆に富んでいます。
100年に一度と言われる再開発
「天神ビッグバン」は、築40年以上のビルが多く立ち並んでいた天神エリアを再開発し、新しい街へと生まれ変わらせる大規模プロジェクト。平成27年から始まり、令和8年末(2026年末)までに約70棟の建て替えが進む見込みだそうです。
高さ制限や容積率の緩和によって、民間による高機能ビルの建設を後押しし、すでに大型の商業・オフィスビルがいくつも開業しています。
中心となる「ワン・フクオカ・ビルディング」には、顔認証によるセキュリティや環境性能の高さなど、次世代の都市機能が詰まっています。これまでの福岡の顔とも言える「福岡ビル」「天神コア」「天神ビブレ」の跡地に建てられており、まさに象徴的な存在です。
都市が成長するための「余白」を生む戦略
こうした再開発は、単に建物が新しくなるだけでなく、「都市の価値をどう高めるか」が本質的なテーマになります。
福岡市は「みどり」をキーワードに、公共施設だけでなく民間のビルにも緑化を促進。なんと最大3000万円の助成金を出すという制度も用意されています。これは国内では例がない規模の助成制度です。
都市における「緑の存在感」が、住みやすさや美しさ、ひいては街の“格”を上げる要素になっているという考え方ですね。
これまでの「高さを競う都市開発」から、「美しさ・快適さ・居心地の良さを競う都市開発」へと時代が変わってきているのを感じます。
ブランドがブランドを呼ぶ
面白いのは、再開発が進むと、世界の一流ブランドやスタートアップが集まってくるという好循環が生まれていること。
フランスの「シャネル」が大型店舗を出店、アメリカ発のイノベーション支援企業「CIC」が拠点を構え、さらには「リッツ・カールトン」が新たに開業するなど、まさに世界とつながる都市を目指した動きが広がっています。
もちろん、まだ道半ばではあるものの、都市の魅力を高めるために「まず自らの手で変える」という姿勢に勇気をもらえます。
福岡の魅力とは?— 再開発だけじゃない、“選ばれる都市”の理由
再開発の勢いが注目される福岡ですが、実は元々、都市としての魅力も非常に高いことで知られています。
福岡の最大の特徴のひとつは「コンパクトシティ」であること。空港・繁華街・オフィス街・住宅地が半径数キロ圏内にギュッと集まっていて、移動がとにかくラク。
福岡空港から地下鉄で10分ほどで天神・博多エリアにアクセスできる都市なんて、世界的にもかなり珍しいんです。
通勤時間も短く、仕事も遊びも暮らしも、すべてが近い場所で完結できる快適さが、移住者や企業に選ばれる理由のひとつです。
また、福岡は言わずと知れた『食の都』。
ラーメン、水炊き、もつ鍋、明太子…と全国区の名物がそろっているだけでなく、玄界灘で獲れた新鮮な魚介も豊富。
外食文化が発達していて、リーズナブルで美味しいお店がたくさんあるのも大きな魅力です。
そして、街のサイズがちょうどよく、人と人の距離感が心地いいというのも福岡を語るうえで外せません。
また、近年ではスタートアップ企業の成長拠点としても注目を集めています。
福岡市は「国家戦略特区」にも指定されており、起業支援に積極的な自治体。行政のサポート体制が整っていることもあり、IT系・クリエイティブ系の若い企業が続々と集まってきています。
多様性と柔軟性が高く、地方都市でありながら新しいことに挑戦しやすい雰囲気があるのも、福岡の大きな強みです。
日本の“西のはし”なのに、アジアの“真ん中”にいるという発想
日本の本州・四国・北海道と比べれば、福岡はかなり“西寄り”。
でも、視点を少し広げて「アジア」という地図で見ると…
福岡は、東京よりもソウル・上海・台北・香港などのアジア主要都市に近い。
という特性があります。
この地理的な優位性から、「アジアの玄関口」としてのポテンシャルが非常に高いんですね。
実際に福岡空港は、国際線の充実ぶりや都市からのアクセスの良さから、ビジネスと観光の両面でアジアとの交流の拠点となっています。
特にソウルとは飛行機でたった1時間程度。まさに「隣町」感覚です。
だからこそ、アジア市場を見据えるスタートアップ企業や外資系企業にとっても魅力的な立地となっており、都市としての成長余地が大きいわけです。
地方だからこそできる戦略がある
今回の福岡の事例は、「都会 vs 地方」という構図ではなく、「地方だからこそできる挑戦」のようにも感じました。
私たちのような地域の事業者にとっても、福岡のように、
- 自分たちの街をどうブランディングするか
- どうすれば人が集まりたくなる空間になるか
- 地域資源をどう見せるか・活かすか
という視点はとても参考になります。
緑化や美しさといったハード面だけでなく、「居心地」や「過ごし方」に注目した街づくりは、どんなビジネスにも通じるヒントがあると思います。
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地方都市の挑戦は、私たちの挑戦にもつながります。
これからも、こうしたうまくいっている取り組みを紹介しながら、自分たちの地域やサービスに活かしていく視点を深めていきたいものですね(^^)
T.kawano
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