スポーツの審判こそAIをもっと取り入れるべき

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連日、熱い戦いが繰り広げられているWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)2026。世界最高峰のプレーがぶつかり合う光景には、仕事中もついつい結果が気になってソワソワしてしまいます。侍ジャパンを応援していると、一投一打に手に汗握りますが、いくつかの試合を観戦していて改めて強く感じたことがあります。それは、「一刻も早くAIによるストライク・ボール判定を導入すべきではないか」ということです。

もちろん、審判という「人間」が下す判定も野球の醍醐味の一つだという意見はあります。しかし、テクノロジーがこれほど進化した今、技術で解決できる「不条理」は取り除いていくべき段階に来ているのではないでしょうか。今回は、ITの視点から、スポーツをより公平に、そしてより楽しくするための「AI判定」について掘り下げてみたいと思います(^^)

審判は「超人」を求められている? 人間の限界を理解する

テレビやネット配信で試合を見ている私たちは、画面上に表示される「ストライクゾーンの枠」を基準に、「今の入ってるじゃん!」「あれはボールだよ」と冷静に判断できます。しかし、球場にいる主審はそうはいきません。時速160キロを超える剛速球や、手元で鋭く変化する変化球が目の前を通過するわずかコンマ数秒の間に、目分量で判断を下さなければならないのです。

際どい球がストライクになったり、ボールになったりと判断がぶれてしまうのは、ある意味で人間である以上「仕方がない」ことでもあります。私たち人間は、その日の体調や集中力、あるいは角度によって見え方が変わってしまう生き物だからです。この「主審の裁量」という不確定要素を、技術で補うのがAI判定(ABS:Automated Ball-Strike System)です。

メジャーリーグ(MLB)での導入はどうなっている?

実は、野球の本場アメリカのメジャーリーグでは、すでに数年前からマイナーリーグでこのAI判定のテストを繰り返してきました。2025年、そして今年2026年にかけては、メジャーリーグでの全面導入、あるいは「チャレンジ制(選手が判定を不服とした際にAIに確認する仕組み)」としての試験運用がいよいよ本格化しています。このシステムは、スタジアムに設置された高精度のカメラがボールの軌道をミリ単位で追跡し、瞬時に判定を下すというものです。

選手が「自分の感覚」を信じて戦うために

AI判定を導入する最大のメリットは、選手が不当な判定に振り回されることなく、純粋な技術向上に集中できる点にあります。

バッターにとって、打席での「リズム」と「予測」は命です。例えば、あの大記録を打ち立ててきたイチロー選手のエピソードが、この問題の本質を物語っています。2009年のブルージェイズ戦、抜群の選球眼を持つイチロー選手は外角への球を「ボール」と確信して見送りました。ところが判定はストライクで三振。普段は感情を露わにしない彼が、思わずバットでボールの通過したコースを地面に引き示して抗議し、人生初の退場処分となった事件です。

驚くべきはその後です。テレビのリプレイ映像で確認すると、投球コースはまさにイチロー選手がバットで示した「ボール一つ分外れた場所」を通過していました。審判の判定が絶対である以上、抗議は褒められたものではありませんが、これほど研ぎ澄まされた選手の「感覚」が、誤審によって否定されてしまうのはあまりに不幸なことです。

選手が「今の球はボールだ」と正しく判断しているのに、審判によってストライクとされてしまうと頭の中の組み立てが崩れ、せっかくの技術向上の邪魔になってしまいます。選手が安心して自分の感覚を研ぎ澄ませるためにも、厳密なAI判定は不可欠なのです。

今回のWBCでも、気になる場面がありました。例えば、準決勝のアメリカ対ドミニカ共和国の試合。最後のアメリカの投手が放った1球は、ストライクと判定されて試合終了となりましたが、映像を見る限りでは明らかなボール球に感じられました。このたった1球でチームの勝敗が決まってしまい、バッターは「自分の感覚は間違っていないのに、打てなかったことにされる」。これほど残酷なことはありません。

審判を守る。それは「言葉の暴力」から守ることでもある

もう一つ、AI判定の重要な役割は「審判を保護する」という点にあります。審判も人間ですから、ミスジャッジをすることはあります。しかし、一度下した判定を試合中に簡単に訂正することはできません。重大な局面でのミスジャッジが試合を決定づけてしまった場合、その審判には世界中から批判が集中し、時には身の危険や誹謗中傷にさらされるリスクさえあります。

私も趣味でバドミントンをやっているので分かるのですが、以前は世界大会で線審(ラインを見る審判)の判定に対して選手が激しく抗議する場面をよく見かけました。しかし現在では「チャレンジ制度」が導入され、ビデオ判定で白黒はっきりつけることができるようになったおかげで、線審への抗議はほぼなくなったと言っていいほどです。自分の判断が間違っていたことが映像で証明されれば、選手も納得せざるを得ません。これは選手だけでなく、審判を不当な攻撃から守ることにも繋がっています。

AIと主審の「ハイブリッド」な形へ

もちろん、現在の野球にもチャレンジ制度はありますが、1試合に使える回数が少なすぎ、1球ごとのストライク判定で使うにはハードルが高すぎます。だからこそ、主審が常にAIのサポートを受けられる体制が必要です。主審が専用のデバイスを身につけ、AI判定の結果をリアルタイムで共有しながらコールを行う。AIの客観的なデータと、審判の熟練した技術を掛け合わせることで、審判の心理的負担は大幅に軽減されるでしょう。

ITの力がスポーツをより豊かにする

「どちらか片方にとって不利な判定に見える」といった各国のファンの疑念を払拭し、公平な土俵を用意する。そうすることで、ピッチャーもバッターも「正確な基準」の中で極限まで技術を磨き上げることができます。これはまさに、選手、審判、そして私たちファン全員がウィンウィンの関係になれる、IT時代の理想的な形だと言えるでしょう。

ITの力は、単なる効率化のためだけにあるのではありません。イチロー選手のような超一流の感覚を尊重し、頑張っている人の努力を正当に評価し、そして審判という重責を担う人々を守るためにあるはずです。これからの野球界が、より「公平で、気持ちの良い判定」によって、さらなる熱狂を生み出していく未来を願います(^^)

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この記事を書いた人
T.kawano

T.kawano

宮崎生まれ、宮崎&長崎育ち。長崎西高、長崎大学経済学部卒。
在学中からWeb業に従事して約20年。人生の半分以上をWebに注いできました。

デザインからライティング、撮影、プログラミングまでやっており、専門家としてセミナーをしたり、Webでお困りの方の相談にも乗ってきました。

現在もWeb一筋で「話す・作るWebディレクター」として活動中。
器用貧乏を逆手に取り、ITの力を活用して少数精鋭の組織で動いています。

三児と一猫の父。趣味は「お笑い」「アニメ(狭く深く)」「バドミントンとそれに必要なトレーニング」
大谷翔平選手、ちいかわ、ヒロアカの話は無限に話せます。
「優しく」「仕事ができ」「面白い」人間を目指して日々精進中。