iPhoneの読み方が「アイホン」ではなくて「アイフォーン」なワケ

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先日、SNSにおいてインターホンやナースコールの製造販売を手掛ける「アイホン株式会社」の公式サイトが大きな注目を集めました。きっかけは、同社の「よくあるご質問(FAQ)」ページに掲載された、一見すると場違いなこの一文です。

「iPhoneの調子が悪いです」

インターホンメーカーにスマホの相談? と一瞬笑ってしまいそうになりますが、SNSでは「真摯(しんし)に答えていて好感が持てる」「今までのFAQの中で一番好き」といった好意的な声が相次ぎました。実はここには、Appleとアイホン社の深い歴史的・法的関係と、Webサイト運営における誠実なユーザー対応のヒントが隠されています。今回はWeb制作会社の視点から、この話題を深掘りしてみましょう。

アイホンで検索をすると…

ちなみに、Googleなどで「アイホン」とカタカナで検索をしてみてください。すると、iPhoneの公式ページやニュースよりも先に、アイホン株式会社の公式サイトが一番上に表示されます。

世の中の検索ボリュームとしてはiPhoneに関することの方が圧倒的に多いはずですが、それでも商標登録をしている「アイホン株式会社」がトップに来るのは、検索システムの精度としては非常に正しい形と言えますね。2番目にAppleのiPhoneが表示されるという並び順も、検索エンジンの意図を感じさせます。

ですが、たしかにこの検索結果を見ると「アイフォンの問い合わせ先はこの会社(アイホン株式会社)だ」と直感的に思い込んでしまう人が一定数いるのも、頷ける話ではありますね(^^;)

なぜ「アイホン」のサイトに「iPhone」が出るのか?

そもそも、なぜ全く別業種のアイホン社のサイトにApple製品のFAQが登場するのでしょうか。その理由は、日本における「商標権」の所在にあります。

日本では、AppleがiPhoneを発売するずっと前から、アイホン株式会社が「アイホン」という名称を商標登録していました。Appleには日本進出にあたって名称を変更する選択肢もありましたが、アイホン社から商標のライセンスを受ける道を選んだのです。この契約に基づき、Appleはアイホン社に対して多額の商標使用料を毎年支払っているとされています。

この商標上の理由から、日本でのiPhoneの呼び方や表記には厳格なルールが存在します。Appleの製品紹介やテレビCMでは、決して「アイホン」とは呼ばず、語尾を伸ばして「アイフォーン」と発音・表記しています。ドコモやKDDIといった通信事業者のサイトでも、「iPhoneの商標は、アイホン株式会社のライセンスに基づき使用されています」という注釈が必ず添えられています。

Webサイト運営としての「FAQ」の在り方

今回の件でアイホン社が絶賛されたのは、自社製品とは無関係な問いに対し「それはうちではありません」と突き放すのではなく、FAQとして正面から回答を用意していた点です。

回答には、自社がインターホン専業メーカーであることを示した上で「お問合せはApple社様もしくは販売店様にお願いします」と、行き先まで添えられています。これはWeb制作の観点から見ると、非常に理にかなった施策です。

  • 誤流入の解決: 「アイホン 修理」と検索して迷い込んだユーザーに対し、即座に正しい情報を与えて離脱させることで、ユーザーの時間を無駄にさせません。
  • カスタマーサポートの負担軽減: 実際に電話やメールで来る「間違った問い合わせ」を、FAQの段階で食い止めることができます。
  • ブランドイメージの向上: ライセンス料を得ている権利者としての責務を果たしつつ、他社製品のユーザーにも優しく接することで、結果的に自社の好感度を上げています。

まさに「FAQは単なるQ&A集ではなく、最高のPRツールである」ということを証明した事例と言えます。

中小企業がこのニュースから学ぶべきこと

今回のアイホン社の事例は、特殊な商標関係があるとはいえ、全てのWebサイト運営者に共通する教訓があります。

「ユーザーの勘違い」を「信頼」に変える
自社サイトには、意図しないキーワードで流入してくるユーザーが必ずいます。それをターゲット外だからと無視するのではなく、「せっかく来てくれたのだから、何かしら役に立つ情報を置いておく」という姿勢が、回り回って自社の信頼に繋がります。

注釈一つにも物語がある
普段見過ごしがちな注釈や権利表記には、企業間の尊重や契約の歴史が詰まっています。自社のWebサイトでも、パートナー企業との関係を正しく、かつ丁寧に表記することは、ビジネスの誠実さをアピールする絶好のポイントになります。

「iPhoneの調子が悪いです」という一見ミスマッチな問いに、全力でスマートに答えるアイホン社。デジタルな空間だからこそ、こうしたちょっとした気遣いや、誤解を解くための丁寧な言葉がユーザーの心を掴みます。私たちWeb制作に携わる人間も、クライアントのサイトを作る際は、こうした「一歩先の優しさ」を実装していきたいものですね(^^)

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この記事を書いた人
T.kawano

T.kawano

宮崎生まれ、宮崎&長崎育ち。長崎西高、長崎大学経済学部卒。
在学中からWeb業に従事して約20年。人生の半分以上をWebに注いできました。

デザインからライティング、撮影、プログラミングまでやっており、専門家としてセミナーをしたり、Webでお困りの方の相談にも乗ってきました。

「話す・作るWebディレクター」として活動中。
器用貧乏を逆手に取り、ITの力を活用して少数精鋭の組織で動いています。

三児と一猫の父。趣味は「お笑い」「アニメ(狭く深く)」「バドミントンとそれに必要なトレーニング」
「優しく」「仕事ができ」「面白い」人間を目指して日々精進中。