「ジブリ風」画像生成は著作権侵害?—文科省の見解が明らかになった
最近、AI画像生成ツールの進化によって、まるでスタジオジブリ作品のような世界観のイラストを簡単に作れるようになってきました。
いわゆる「ジブリ風」と言われる画像たち。
私も生成画像を扱う場面が増えてきた中で、
「これは著作権的に大丈夫なのかな…?」とずっと気になっていた話題でした。
ジブリ風が話題になったきっかけは、あの人の“プロフィール画像”
今回の「ジブリ風」に関する話題、もしかすると見覚えがある方もいるかもしれません。
実はこの話題が一気に注目されたのは、OpenAIのCEO、サム・アルトマン氏のプロフィール画像がきっかけです。
少し前にサム氏のX(旧Twitter)のアイコンが“ジブリ風”のテイストに変わり、それを見た世界中のユーザーが「すごい!」「これ作りたい!」と話題に。
その画像は、まさに宮崎駿作品に出てきそうな、柔らかくてノスタルジックな雰囲気をまとったイラスト。
「これってAIで作れるの?」という驚きとともに、多くのクリエイターや一般ユーザーが「自分もジブリ風にしてみたい!」と火がつきました。
その後、SNS上には“#GhiblifyMe”のようなハッシュタグも登場し、一大ムーブメントに。
もちろん本人も「ジブリ風です」と明言したわけではありませんが、その雰囲気があまりに似ていたため、各国でニュースになり、今回の国会での取り上げにもつながったようです。
「作風の類似のみ」であれば著作権侵害には当たらない
そんな中、昨日国会でこの件が取り上げられ、文部科学省から見解が示されました。
文部科学省の中原文部科学戦略官は、以下のように答弁しています。
「単に作風やアイデアが類似しているのみなら、著作権侵害には当たらないとされる」
つまり、作品全体の“雰囲気”や“タッチ”が似ているだけなら問題なしということ。
一方で、
「既存の著作物との類似性や依拠性が認められれば、著作権侵害となり得る」
との補足もあり、あくまで「そっくりすぎる」ものはNGというスタンスです。
安心したけど、やっぱり注意は必要
正直、これはちょっとホッとしました。
というのも、例えば私たちが生成AIを使ってイメージビジュアルを作る場面は年々増えています。
クライアント案件でも、「やわらかい雰囲気で」「昔話っぽく」「海外アニメ風で」など、
“〇〇風”のニュアンスを伝えることで理想の方向性を示すのはよくあること。
その延長として「ジブリ風」「宮崎駿っぽい」などを入力することもあり得るわけで(私は避けていましたが)
この辺の“ニュアンス表現”がすべてアウトになると、かなり表現の幅が狭くなってしまうなと懸念していたんです。
なので今回の見解で、「作風そのものが著作権侵害に当たるわけではない」と聞いて少し安心しました。
ただし、何でもOKではない
とはいえ、何でも“ジブリ風”と銘打って出せばOKというわけではありません。
・明らかに登場キャラクターのデザインが酷似している
・背景構図や演出が完全に模倣されている
・あたかも本家が関与しているように見える表記や演出がある
こういったケースでは「依拠性」が問われ、著作権侵害とされる可能性は十分にあります。
あくまで「参考にしたイメージの方向性」という範囲で使い方をコントロールしていくことが大切ですね。
AIツールの進化が与える影響
今回の話は、AIの進化とともに起こる“表現の自由と権利保護”のバランスに関する話でもあります。
生成AIは本当に便利なツールですが、使う側のモラルや配慮が問われる場面も増えてきました。
たとえば当社では、生成した画像をそのまま使うのではなく…
- クライアントへの参考イメージとして使う
- 方向性のすり合わせ用に限定する
- 実際の使用には必要に応じてイラストレーターさんに依頼する
など、使い方にメリハリをつけています。
クリエイターや文化へのリスペクトを忘れずに
ジブリ作品のような“世界観”は、日本が世界に誇る文化のひとつだと思います。
それを参考にすることは悪いことではありませんが、
やはり本家のクリエイターたちが時間をかけて築き上げた表現に対して、
リスペクトを持つことは大前提だと感じます。
「便利なツールを使う」=「何でも許される」ではない。
私も例えば自分で描いたイラスト調が、他の人に生成AIで簡単に模倣されるようになれば気分は良くありません。
著作権侵害に当たるか以前に、やはりクリエイターの気持ちもやはり大事にしたいと思っています。
T.kawano
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